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【イトナミコラム号外】第1回イトナミツアー諏訪編
◎はじまり
ものづくりとは人間の情緒を他者に伝わる形に変換することだ。
その想いの純度が高ければ高いほど自己情緒は熱を発して情熱となり、他者に愛を伝える形になる。
その形は個々の違いも、生きる時代も超えて、永遠に想いを伝えるものになるだろう。
現代に生きる僕らは、生きるため、金のため、名誉のため、認めてもらうためにものづくりをしてしまいがちです。
それもいいんですが、伝統を継承したものづくりをするからには、今この時この人だけを満たすものではなく、過去も現在も未来もいつでもどこでも誰でも満たす、存在と時間を忘れさせる永遠の今を形にしたものづくりをしたい。
私は今までの酒造りと独学で知った先人たちの教えから、ものづくりの極意を学びました。
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彼らのやったことは天才すぎて正直全くわかりませんが、言葉の端々を都合よく自分に落とし込んで、なんとなく彼らの言ってることを掴んで、具現化できるようになってきている気がしてきました。
ものすごくざっくり言うと、岡潔と熊楠と西田と岡本太郎を合わせたら私の理想の日本酒になるのです。
そう考えていると、彼らが私に諏訪にいけと囁いているように思えてきた。
ということで、純粋な思考が形になっているものを見に行こう、ラーニングしに行こうという情熱が高まり、長野県諏訪にイトナミの痕跡を探す旅に行って来ました。
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◎諏訪について
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諏訪といえば縄文文化が色濃く残る古い文化が残されている土地。諏訪大社の祭神タケミナカタから見て分かるように、出雲から新潟ルートで移動してきた出雲族との関わりも深くてとても気になる場所。
ミシャグジや道祖神、賽の神という生命信仰や精霊信仰、蛇信仰(nag)が想像できる純粋な思考の痕跡があり、また各神社に設置される御柱もその流れをくむ造形ではないかと考えられる。
今回は最も古い造形を持つであろう石棒のミシャグジを中心に見に行った。
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石棒や丸石がミシャグジの依代として祀られている事が多い
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ミシャグジからの派生のように感じられる
相対とすることで縁起の仕組みを内蔵している
◎旅の仲間
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旅には仲間が必要です。一緒に諏訪に行く仲間を探しました。ミシャグジを見に行こうと言ってもわかりにくいので、諏訪にち◯こを見に行こうと端的に誘ってみたところみんな快く承諾してくれた。
現代人の僕らはち◯こというと言葉だけで敬遠してしまうが、その形は生命信仰を最もシンプルに表現する純粋な形であり、永遠に伝わる美しい形だ。
この造形が残されている土地はおおむね古くて強固な地盤や高台にある土地であり、長い時間の中で信仰を集めてきた聖地である可能性が高い。水没や災害の恐れが少ない歴史ある土地。ミシャグジの残る諏訪も高台の古い聖地だ。
私は生命信仰の形を探し、その経緯(イトナミの形って知ってる?・世界はヘビで満ちている)を伝えていたので、イトナミ諏訪ツアーもみんな十分に理解?して参加してくれた。
【酒造】イトナミ杜氏@itonami_touji
【そば職人】タナーガ・トチキ@soba.toshiki
【飲食店・インフルエンサー】ゴールデンカイ@goldenkai42
【飲食店】女将@koryorikokoro
【酒屋】白石@caliquorstokyo
【ライター】あちゃこ@achalol
諏訪、suwa、すわと思っているとkokoroの女将が長野好きなことを思い出した。早速相談し、素晴らしいガイドさんたちを紹介してくれた。
【ガイド】石埜 三千穂さん
林さん/スワニミズム
高柳さん/beth
【ワインショップ】岩井さん@iwai_do
こうして諏訪にイトナミの群れが誕生することになる。
◎前夜祭
イトナミツアーが迫ってきたある日、ある衝撃的な画像を目にした。
新宿歌舞伎町トーヨコのバーニング画像だ。
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誰がなんのためにこんなことをしたのだろう。
出雲にいる私にはトーヨコの日常が同じ日本の出来事とはなかなか思えなかった。
僕らのものづくりはトーヨコの彼らにも届くのだろうか。とても不安で自信が持てなかった。
現実を見るためにトーヨコのイトナミが感じられるであろうバーニング跡地に行かなければならなかった。
諏訪行きを翌日に控えた夜、カイくんにアテンドしてもらい、タナガとともにバーニング跡地を確認してきた。
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しっかりとバーニング痕跡が確認できた
トーヨコのバーニング跡地とその周辺を見て不思議な気持ちにおそわれた。
純粋な想いは正負どちらにも存在し、僕らはその正負を主観で勝手に決めて判断してしまう。バーニングをした人の想い、哀しみ、願いは純粋だったのかもしれない。
諏訪ミシャグジ信仰を肌で感じ、気持ちを整理してイトナミツアーの記事をまとめている現在の私は、このバーニングした人の気持ちに少し寄り添うことができる気がしている。
この時、このトーヨコ・バーニング跡地がミシャグジ信仰を理解する上で大きな意味を持つことになるとは夢にも思わなかった。
◎2023.6.30 諏訪へ
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ということでエーデルピルスを飲みながら仲間を待つ。
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◎諏訪着
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みんなペンとノートを持って真剣だ。
◎津島神社近辺の石棒
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開始数分で石棒を拝む。
みんな一瞬にしてこのツアーのガチ感を察知したようだ。
自由時間は1分もない。過密スケジュールで諏訪を体感する。
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その時には1つ増えて帰ってくるため2つ石棒があるらしい。
安産祈願で持ち運ばれて、子が生まれたら石棒を増やして返す。子宝信仰らしくていい話だ。
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棒は男、穴や丸石は女性や妊婦を暗示する生命信仰の基本形だ。
◎諏訪大社下社
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諏訪では社の四方を囲むように大きさの違う巨木の柱が立てられる。
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底の抜けている柄杓が奉納されている。
底が抜ける=安産のメタファーが成り立つ。
穴信仰、生命信仰の名残がうかがえる。
この発想はものづくりにも転用できる。
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歴代の石棒はどこに行ったのだろう。
ここを起点に神社が始まったのだろうかと想像する。
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台座にはヘビ信仰や神を想像させるヘビと龍が描かれていた。
この境目は空間距離の境ではなく、現実世界(人)と脳内概念(神)の境だ。
それを暗示させる鏡と台座の芸術性が高い。
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一が多に、個が群れになるメタファーのさざれ石があった。出雲大社にもあるね。
しめ縄も一が多になる隠喩だし、神社の神様もそういう意味なのかな。
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◎諏訪大社上社
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石座?これがとても重要な気がする
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6年毎で遷宮してるらしい
主基殿・悠紀殿のような縁起構造になっている
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水源→硯石(祖先)→諏訪の民、諏訪湖へ広がっていくのような群れのイメージが浮かんできた。
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◎瀬神社近辺の石棒群
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発掘されると神社に持ち込まれるようだ。
それはこの神社の周辺には縄文集落が多数存在していたことを意味している。
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見つけると何故か嬉しくなる。
突如としてち◯こ探せゲームが勃発する。
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なんなら灯籠の元ネタが石棒なんじゃないかと疑っている。
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天地限らず棒は穴とともにある。穴があったら要注意だ。
僕らはすでに野生の目線を得つつある。
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諏訪人は柱を中てないと気がすまないようだ。
ここで、石埜さんより驚きの話を聞く。
ミシャグジ(石棒や丸石)、双体道祖神はぞんざいな扱いを受けることもあるという。
拝まずに睨んだり蹴ったりわざと邪険にすると。
これはおまじないの一種で、願いの逆のことをすると願いが叶うという呪術的な要素をはらんでいるらしい。願いは反転する。好きな子に意地悪をして気を引く男の子のようだ。
好きと嫌いは互いにアンチエントロピーとして作用して縁起する。
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子宝を願う創造の力にあえて逆の破壊の力を加える。
そうするとミシャグジという精霊のような力が石棒や丸石に現れて我々に子供を授けてくれる。
そんな呪術があったのだろうか。
ふとトーヨコのバーニングチ◯コが脳裏によぎる。
チ◯コだけではただの悪ふざけだが、バーニングしているところに何か惹きつけられるものがあった。燃えているからこそ芸術性を感じるのだ。
ミシャグジを雑に扱い願いを成就させる呪術と同じことが、歌舞伎町トーヨコという現代の闇を象徴する場所で行われた。
あれは純粋な祈りの行動だったのかもしれない。なにかメッセージがあったのだろうか。大人や学識者の目線ではなく、正しい正しくないではなく、個人の、人間の目線で隠されたメッセージを考えたい。
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