エディオンピースウィング広島
ライフワークの柿落とし巡り、2024年2月10日は、広島に行ってきました。
現時点での「日本一まちなかサッカースタジアム」
中国新聞のサイトには、写真に加えこれまでの経緯を分かりやすくまとめてくれているので必見。
後ほど、あれこれ写真付きで解説を書きましたが、端的に言うと(民間や個人の寄付もたくさん集めながら)
市の保有する公共施設として、この上ない素晴らしいクオリティ!
全国で真似したい人がたくさん出てきそう!
です。
総工費:285億円
この内訳の最終版は公表されていませんが(あったら教えてください)、複数の記事から推察するとこの様になるのでは。
国の補助金:80億円
広島県:30〜50億円
広島市:30〜50億円
エディオン:30億円
マツダ:20億円
地元経済界:20〜30億円
個人の寄付:5億円
使用料収入:20〜30億円
(複数の情報ソースをもとにした推測)
「財源どうするんだ?」「サッカーは試合数が少なくて儲からない」というドリームキラーに対しては、志と多くの人が集まれば何とかなるんだ、という実例を示す上でも、非常に意義深い資金構成。
(情報ソース)
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/life/730736_7174810_misc.pdf
北側住宅地への騒音など、一定の不満もあるものの、総じて良い計画であり、全国のクラブや自治体がベンチマークにするのに適した1つ目の「まちなかスタジアム」が誕生した、記念すべき2024年2月10日でした。
2023年のエスコンフィールドHOKKAIDO、2024年のエディオンピースウィング広島、秋にオープンする長崎スタジアムシティ、この3つで「都市・建築とスタジアム・スポーツ」について何時間でも語れそうな、議論・妄想・構想の材料となる実例が日本にも出揃った感があります。アリーナはひと足先に動いていますが、スタジアムも、いよいよ本格的な変化の時を迎えたと感じました。
【立地がとにかく最高。都市の「中」にあるスタジアム】
空撮写真で全体を把握したら、アイレベルで見てみましょう。気になった方は、ぜひ現地へGO!
【複数コンコースによる回遊性】
日本に限らずスタジアムあるある問題点は、ここ、行き止まりなのかよ!ここ、迂回するとめちゃくちゃ歩かされるんだよな、ただでさえデカいのに、急いで外に出て帰りたいのに、という回遊性の乏しさ。
このスタジアムの計画上のポイントは、それを解消すべく、
3Fのメインコンコース
2Fのパークコンコース
を中核に、
4Fのスイートテラスコンコース
5Fのバックスタンドコンコース
1Fの公園
と、縦横無尽に動き回れる様になっている。日本最初のボールパークと言われるマツダスタジアムに行き慣れたファンも納得のクオリティなのでは(ぜひカープファンと一緒に行って生の声を聞いてみたい)
広島という都市は、野球とサッカー両方、最強の施設を手に入れた。羨ましい。
加えて、1F〜5Fを階段やエスカレーターで適切につないでおり、ここに慣れた人が他のスタジアムに行くと動きにくさにストレス溜まりそうだな、、、という作り。日本のスタジアムの基準値が上がった瞬間でした。
【入場ゲート】
まちなかからアクセスすると、2Fのパークコンコースから階段を上がった3FのAゲートから入場するのが、主なアクセスになっていきそう(座席による制約がなければ)。ガラスの屋根もあり、雨の日の待機列も問題ない。
心待ちにした地元サポーターは、本当に嬉しそうに写真を撮りまくっていました。これまた羨ましい光景。
【ピッチが近い!】
サッカー専用スタジアムはそこそこ訪問してきた経験もあり、長崎のJリーグの制約ギリギリの5mに対し、広島は8mなので、近さはそこまででも?と期待していなかったが、この3mには、そこまで大きな影響がないのか、相対的なスタンドの大きさからなのか、非常に近く臨場感のある見応えでした。選手の声やボールの音がダイレクトに伝わってくる。サッカー選手の体格の良さも印象的でした。間近に見るとはこういうことなのか、と。これは少なくとも陸上トラックを挟んでは感じられないことでしょう。国立競技場や日産スタジアムのメインスタンド前方席で、クラブW杯やACLを観戦しましたが、そんなことは感じなかったので。
【バラエティ豊かなシート】
市所有のスタジアムとしては、おそらく最大種類のシートバラエティがあるのでは。マツダスタジアムのある都市、広島ならでは。
カープ・マツダスタジアムでは39種類でした
いくつか紹介します
【工夫あれこれ】
5分11秒〜のところは、もはや広島名物か。この絶妙なオープンさ。
【帰宅】
サッカーは試合終わってから一苦労。どことは言いますが笑、埼玉スタジアム、日産スタジアム、等々力スタジアム、吹田スタジアム、サンガスタジアムなどなど、帰りが苦痛でしかないスタジアムが、今の日本では普通です。行くまでは気分が上がっているのでいいのと、みんなバラバラに集まるので問題ないのですが、皆が我先にと帰るあの殺伐とした帰り道を考えると、足が遠のく人も少なくないのでは。
広島では、私が見た限り、特に混乱もなく、スムーズに南側に向けて、どんどん人が流れ、街なかに吸い込まれていっていた様子。
サッカーで集まった人がストレスなく、試合後の高揚感を持ったまま街で食事や買い物をして、地域での楽しみやお金の流通量が増えていくのでしょう、羨ましい。まちなか立地×回遊動線の大勝利。
私の地元にもJクラブがありますが、近い将来、まちなか立地にサッカー専用スタジアム+複合施設が欲しいものです。
地元テレビ局が開幕戦直後を取材するとこんな感じとのこと。まちなかの効能が一番わかりやすい動画。
【おまけ】
【少し気になったところ】
人数の少ないアウェイのガンバサポの声の方が、ホームのサンフレサポより大きく聞こえました。サポーター自身の声が大きいのかと思ったが、屋根形状や塞ぎ方で反響が違ってきていそうだと感じました。
南側屋根の開放感は最高なのだけど、サポーターの声が選手に届くまでに、どういう影響があるのか知りたいところ。隙間から声が抜けてしまっている可能性も?
明日、J開幕戦のレッズサポの声はどうなるのだろう。(開幕戦前日のギリギリ深夜に書いております。なお明日は行けませんので、誰か聞いてきて欲しいです)
【今後に期待】
スタジアムグルメの充実。広島ご当地ものを食べられると、より満足感は高くなったと思うが、まだ初戦の柿落とし。8月には隣に公園+商業ができたり、そもそも都心が近過ぎるので、スタジアムではサクッと、ちゃんと食べるなら徒歩10分でそっちで食べればいい、ということもあるけれど。好立地のスタジアムにおける最適なグルメが、どんどん進化して登場してきてくれるでしょう。期待。
【増築の可能性は】
こんなに素晴らしい立地にあるので、4万人くらいのキャパまで、増築(または仮設スタンド設置)の余地があれば良かったのではないでしょうか。将来、サンフレッチェがよりビッグクラブになって客席が足りなくなってきたら増設したり。ワールドカップをもう一度、日本に招致する時に広島を会場にできることの意味を踏まえると、もう一歩検討しても良かったかもしれない。FIFAが28,000人キャパでもW杯の会場にする、とその頃にはなっているかもしれないし、そうなっていると良いのだが。
ゴール裏には土地がないので現実的にはほぼ不可能。道路形状の変更は非現実的または非常に時間がかかる。道路の上への建設は、実例はあるが、虎ノ門ヒルズ級の難易度で、これまた困難極まりない。
となると、メインスタンドorバックスタンドの増設であるが、その時には、この特徴的な屋根が邪魔になりかねない。屋根掛け直すのは、ありなのか?
とすると、南側に空いた特徴的な2つの開口を潰しながら、1万人強を入れ込めるか。いやちょっと面積が足りなさそう。
何十年先のことだろう、と思われるかもしれないが、スタジアムの耐久性や、都市計画の事業スパンは、何十年もの時間軸なのだ。
アンフィールドは、140年かけて進化を続けている。周辺の住宅地を買収して増築したとのこと。
良いものを見ると人間の欲はキリがない様で、最後はもっともっとと要望が出てきましたが、間違いなく現時点では日本ナンバーワンのスタジアムでした。
また行こう。
こちらでも詳しくリポートされてます。