波が打ち上げられた魚を
覆うようになってきた満ち潮は
帰ろうというように
ハエやカラスに
散々食べられたからだを
少しずつ沖へ戻していく
砂浜近くの丘で
それを見つめていた鳶が
長い時を待って
漸くひとくち啄ばんだ
食べる時
なぜあんなにも
姿勢を変えなければならないのか
脚元に波の先端が触れる
きみの
素足についた砂が波に洗われて
皮膚が光る
そのあと
翼ごと
空へ舞い上がる時の
汚れた感じが
一瞬
波音が止むあの静けさと
交じり合って
まだここから
去ることができない
温い風に
頭を撫でられている気がして振り返る
そこにあった砂浜の
草のみどり
ユリイカ 2018年8月号
選 : 水無田気流
#詩 #twpoem #現代詩