窓硝子が
霧雨を湛えたまま
夜明けを遮っている
朝陽が色を抱えてくる
夜通し本を読むわけでもなく
人が作った歌を聞いていた
あの日の記憶を思い出す旋律
何故歌は思い出を吸い込んでいるのだろう
まだ聞けない歌
口ずさめない歌詞
私の中にあるものは音楽だけではないのに
砂浜の匂い、路地に反射した子どもの小さな影
渡り鳥の横たわる身体、裸体と星の名前
アパートの錆びた階段で浴びた風
とおくで
眠るあなたにも
まだ聴けないうたがあるだろうか
さよなら
その一言よりも
もっと
苦しくなるものが
空が夜明けをおいこしていく
青空になるために
霧雨は遥かな気化を
待ちながら
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