12

「余熱」

雨が激しく降った後
川底は柔らかくなり鮎たちは
卵を良く産むようになる
水面は銀の姿で満たされている

朝、昼、夜
それらの間の淡い時間
離していく手と結び直される手
身を包み巻き上がる熱の
どれかは
私が与えたもの
目は休みこころも休む
五分間のうたたね

フロントガラスについた
鳥のフンもこの世界の一部を担う
雨が洗い流すまで
この光景を空へ反射させ
足りないなにかを
見せようとしている

かけていたタイマーが
昼休みの終わりを告げると
花粉の運ばれたドアをあけ
去っていくここから

新しい外気は
呼吸を
忘れないように
一瞬の冷たさを肺に届かせた

地上の蟻の小ささを
目は見つけ
足を大きな歩幅に導く

助けたのではない
優しさでもない

砂利の方へ迂回せよ
誰かかがそう言ったわけでもなく

踏むことの恐れが
どこからきたのかわからないまま

靴底にあたる
小石の感触

#詩 #twpoem #現代詩

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?