14

夜の走り方

このままでいる
雑音を探そうとする鼓膜
タオルの擦れる前の白
引き寄せた紐が手から離れると
消える部屋の明かり
食いしばれば心も眠りにつく

昼間見たホームセンターで
売られていた仔犬、仔猫
歳を重ねるほど値段が安くなっていた

ゲージ越しの甘噛み
ちっとも痛くない
君の刃はとても優しい
どうか
途方もない幸せがきみに待っていますように

魚の餌になる昆虫は
アクリル越しに鳴き声を
響かせていた
一体なぜ
違う身体を持って
それぞれが生まれたのか

鉢植えの紫陽花は咲いて
ただそこに
均整がとれた花びら
水の上に落ちるなら
花の色を捨ててから

飽和の上に雨が降る
溢れ出す音が
何かに似ていた
静かにふらついて倒れて
その姿勢のまま不恰好な暴れ方で
答えている

自販機の前で
薄い布を敷き
一人祈っていたイスラム人だけが
西北西を向いて
迷いから遠ざかっていた

#詩 #現代詩 #twpoem

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?