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PerfectSunday


 完璧な日曜日というお題が出されたことで、完璧でない日曜日という概念が生まれた。日曜日にとっての完璧とは、1日=24時間を満たしていることだろう。うるう秒でもなければ。
 なるほどたしかに日曜日とは、体感24時間に満たないことが多い。予定していた用事は半分も済ませられないし、ジャック・バウアーは世界を救えない。
 100パーセントの女の子と100パーセントの男の子が出会うのと同じくらい、完璧な日曜日は稀有だった。


「パーフェクトサンデーです」
 にこにこ笑顔のウェイトレスはテーブルにパフェグラスを置いた。アイスとクリームとフルーツソースが小綺麗に盛られている。
「何に対するパーフェクトなの? 脚が生えてるの? フルアーマーと肩キャノンが付いてるの?」
 私は問うた。
「完全栄養食です」
 ウェイトレスは丼一杯のゆでもやしをサンデーにぶちまけた。
「完全栄養食……」
 しげしげと眺める私の前に、ウェイトレスはチューインガムを吐き捨てた。


「上から読んでも日曜日。下から読んでも日曜日」
「月曜月も火曜火も水曜水も木曜木も金曜金も土曜土も、そうだぜ」
「洗濯洗もね」


 日曜日なのでコールセンター従業員たちは、仕事場を抜け出した。彼/彼女たちはケーブルテレビ局の応対担当だったので、お爺さんお婆さんにテレビの入力切替やモデムとルーターの電源抜き差しを案内することにも飽きていた。
 コールセンター従業員たちは、競走馬と駅員とホテルマンと道路工事員とインターネットプロバイダとピザ配達員とプロ野球選手とビール売り子とタクシー運転手と野良猫とコンビニ店員と牧師とシアター従業員とシルバー人材の皆さんと一族郎党を誘い合わせて、昭和記念公園でピクニックした。


ガイ・ピアースは
「もう少しでペッパーを完璧にできたのに」
と言い、
ロバート・ダウニー・Jrは
「だがペッパーはとっくに完璧だった」
と言った。
アイアンマン3の話だ。


 日曜日の悪魔は忙しい。特に契約数トップのエリート営業悪魔は。
 平日に回収した人間の魂を彼らは、こねて寝かせて焼いて冷ましてパンにして魔界へ送るのだ。
 魔界では人間の魂パンが好評だ。うどんも良いが、うどんよりパンが好評だ。
 悪しき魂を練り込んだパンは、竹炭ロールのようにひと味違うのだった。


 彼女は日曜日が嫌いな子供だった。
 受けるべき授業のない休日を、彼女はスマホを眺めて過ごした。
 目は悪くなったが眼鏡をかければいいし、スマホを見るのに視力2.0は不要だった。
 だが視力の低下は別の病気を招く。近視で前後に長くなった眼球は視神経への負担が増して、緑内障リスクも高くなる。
 その情報を彼女はやはりスマホで知ったし、眉をひそめてスマホをしまい、街へ出ることにしたのだった。


ウォンバットを眺めるのがいいでしよう。
五月山動物公園には34歳のウォンバットのワインさんがいますよ。
ギネスにも記録された、大変ありがたいひとです。
そんなことは全然気にしていないでしようが、日曜日を過ごすには一番いいところでしよう。

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