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オンネトー「湖の鳴き声」と冬の北海道のフィールドレコーディング

詳細は出せませんが、とある映画のサウンドトラックのために「湖の鳴き声」を録音する必要がありました。鳴き声とは、湖が凍結する時期のごく短い期間にしか聴こえない不思議な音。インベーターゲームみたいな、ピュンピュン音です。ほんと。

録音するために、12月のオンネトーへ。阿寒湖温泉を拠点に、三日三晩張り込む荒技で挑みました。

結論は以下。

映像は明るくしていますが、この時は深夜3時半。夕方の日没から張り込み、一旦休憩し、また深夜3時前から張り込む。というのを3日繰り返して、ようやくこの氷の大合唱を録音できました。

初日から音自体は鳴ったのですが満足できる音量と密度ではなく、監督からもNGをもらい・・・心折れかけていたときに大合唱が始まりました。真っ暗で、感動と恐怖がすごかった…。

そもそもこの音、原理も分かっていない(らしい)ので、張り込むしかない、しかも道路は通行止めなので都度2キロ手前から徒歩で接近するしかありません。本当に大変でした。(松本一哉さんと足寄町役場の神崎さんにはいろいろ情報提供いただき感謝ですっ!)

レコーダーはZOOMのH6essentialとRODEのペアマイク、ハイドロフォンはAquarian AudioのH2D。

湖底から湧き出るガスが凍った「アイスバブル」

オンネトーは火山由来の湖なので、ガス穴が凍らずに開いています。そこにハイドロフォンを垂らして、氷のしたの音も採取しました。

長年フィールドレコーディングをやってきましたが、こんなに過酷な録音は初めてでした。しかし、周囲数キロにわたって自分以外に人がいない、そして風もない静寂の湖。夜中なので鳥すらも泣いておらず、氷と雌阿寒岳と星空だけという状況がたまらなく愛おしてくなります。

山や森で鳥の声を聴くとすごく美しいと思ってきましたが、本当に美しいのはまちがいなく「静寂」を聴くことだと分かりました。

時々鹿やきつねが山に踏む足音が聞こえましたが、それすらも邪魔に思えるほどの静寂。自分の心臓の音が聴こえそうなほどの静寂。氷点下15度の中、寒さを忘れる美しさでした。

H2D
大きなアイスバブル

これから湖の鳴き声を映画用に編集します。監督からOKがもらえるといいのですが・・・!


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