ミラー生命の脅威:科学が直面する新たな倫理的課題
科学者たちは、生命の「鏡像」バージョンが地球上の生態系に深刻な影響を及ぼす可能性があると警鐘を鳴らしています。
ようは、
地球上に存在しない鏡像型たんぱく質が存在すると、既存の生物が危うくなるかもしれない、
というはなしです。
まず、現在の生命は、右利きのDNAと左利きのタンパク質で構成されています。その理由は未だ解明されていない生命科学のミステリーの1つです。地球外の小惑星で見つかった有機物(生命の一歩手間)から分析されたたんぱく質は、右・左の偏りはありませんでした。
ただ、まったく見当がつかないわけでなく、仮説も提示されています。過去記事を1つ紹介します。
この現細胞の構造を反転させたものを、「ミラー細胞」と名付けられています。もちろん自然には存在しない架空のものです。
この仮想の細胞について興味深い報告がありました。
上記を踏まえたScience誌記事はこちら。
注目ポイントだけ抜粋すると、
このようなミラー細胞は既存の抗生物質に耐性を持ち、地球上の生命全体に壊滅的な影響を与える可能性があると指摘しています。
ざっくり言えば、今の免疫メカニズムが今の偏った構造に依存しているため、ミラー細胞で設計された細菌が広まるとそれを防ぐのが難しくなるということです。
そもそも「そんな架空の生命体を創れるのか?」と訝しむ方もいるかもしれません。
上記レポートでは、それを非生物的な成分から細胞を構築する「ボトムアップ」アプローチと、既存のバクテリアを鏡像化する「トップダウン」アプローチの方法が紹介されています。
ちなみに、細胞を人工的に設計する「合成生物学」については、過去何度も紹介しており、この流れを踏まえるとリアリティは感じます。(あとは工学的な理由ぐらい)
ただ同時に、このような細胞を実際に作成するにはまだ数十年程度かかるとも同時に予測しているため、(この内容が正しいとすれば)今から議論と国際的な規制に踏み込む猶予はあります。
科学では「ミラー〇〇」という言葉がちょいちょい登場しますが、今回のミラー細胞は、科学者に限らず非専門家でもその可能性を認知し、その危険性について対話できる場がこれから必要ですね。