進化の軌跡:魚のエラから人間の外耳を形成する遺伝子回路
我々の五感のうち、「耳」に関する驚きの記事が出ています。
ようは、
人間含む哺乳類の外耳を形成する遺伝子は、魚から派生した可能性がある、
という話です。
外耳というのは、名前の通り耳の外側にあたり、集音の役割を担っています。もっと耳の部位を知りたい方は下記がお勧めです。
また、耳については最近Science誌で面白い記事も出ています。
こちらも同じく哺乳類の外耳に関するものですが、その中に従来と異なる軟骨を発見した、というはなしです。
これらは刮目ならぬ刮耳ですね。
今回は、もう少しこれらを掘り下げてみます。
新種の軟骨:耳の秘密兵器
新たに発見された軟骨は、脂質を豊富に含み、通常の軟骨とは異なる特性を持っています。
この特殊な軟骨は、まるでレゴブロックのように均一なサイズの細胞で構成されています。これにより、複雑な微細構造を形成することが可能になったようです。
また、この新種の軟骨は、耳だけでなく、鼻や喉頭、胸骨にも存在することも確認されています。興味深いことに、外耳を持たない両生類や爬虫類、鳥類には見られません。つまり、この軟骨は哺乳類特有です。ちょっとミステリーの匂いがしますね☺
と、フリを効かせてNature誌による刺激的な仮説に移ります。
耳の進化:魚のエラから哺乳類の耳へ
今回の論文では、哺乳類の外耳を形作る遺伝子制御回路が、魚のエラから進化した可能性が高いことを提唱しています。
研究者たちは、ゼブラフィッシュと人間の軟骨の遺伝子活性を比較しました。すると、人間の耳の軟骨とゼブラフィッシュのエラの組織が、非常に似た遺伝子活性パターンを示したのです。
さらに興味深いことに、この遺伝子制御システムは、さらに遠い祖先にまでさかのぼる可能性があります。カブトガニのエラにも、類似した遺伝子活性が見られました。
今までの生物進化の流れで見ると、
魚類→両生類→爬虫類→哺乳類
という大まかな系統がありましたが、そう単純な話ではなさそうですね。
まだ異端の部類ですが、人類は両生類だった、つまり水辺に棲んでいたという「アクア説」があります。
背景として人類特有の
・直立歩行
・無毛
・厚い皮下脂肪
をうまく説明できるということで唱えられました。
繰り返しですがまだ異端です。今回の魚類と人類のつながりということで何となく連想してしまいました。
最後に、今回新しく発見されたシン・軟骨の応用について触れてみます。
未来への応用:再生医療の可能性
この研究成果は、単に進化の謎を解き明かすだけでなく、再生医療の分野にも大きな可能性を秘めています。今回発表した研究者たちは、この新しい知見を活用して、人間の胚性幹細胞から顔や首の軟骨に似た構造を育てることに成功しています。
将来的には、この技術を用いて、顔や首の軟骨修復に使用できる可能性があります。怪我や疾患で失われた組織を再生する、そんな夢のような治療法が現実のものとなるかもしれません。
私たちの体には、まだまだ多くの謎があることを気づかせる、まさに耳目を集めるはなしでした。