知能解明に大きく前進:脳の同期処理につながる「量子もつれ」の発見
以前に、人間の脳内でも量子もつれが行われている、という話題を取り上げました。
実験では、脳内の記憶部位に関する領域での可能性に言及しています。
念のために「量子もつれ」について解説しておくと、量子(原子未満のサイズの素粒子。今回は光子)間を一旦もつれさせると、どんなに遠距離でも相関するという謎の作用のことです。
従来は、これらの素粒子を極低温で隔離した状態でないと制御はできないので、脳のような高温でノイズが多い空間では量子もつれ現象は起こらないと考えられていました。
ところが、中国の研究グループが脳内で自然に量子もつれが発生している、という驚きの研究成果を発表しました。既にPhysical Reviewという専門誌で査読済みです。
量子もつれを発見したのは、ニューロン(神経細胞)間をつなぐ軸索(Axon)を覆っている「ミエリン鞘(Myelin sheath。別名「髄鞘(ずいしょう)」)」と呼ばれる場所です。ここは軸索にエネルギーを供給して活動電位伝導を高める、絶縁体のような役割を担います。
この円筒リング状のミエリン鞘を構成する脂質分子のうち、縁に近い個所(CH結合)で、量子もつれ状態にある光子を放出していることを確認しました。
脳の基本動作について復習しておきます。
脳内には上記のニューロンが1千億程度存在し、軸索(&樹状突起)を通じたネットワーク構造をとっています。
それが電気信号であたかも同期をとっているように自然発火することが知られています。
この膨大な神経ネットワークで広範囲に同期がとれるのは、長年の謎でした。というのも、ニューロンから次のニューロンに電気信号を渡す時間は、1-5mm(ミリ。10のマイナス3乗)秒という時間です。
この値だけみると早いと思うかもしれませんが、我々が使うデジタルコンピュータは1n秒(ナノ。10のマイナス9乗)に迫る速度です。つまり、コンピュータは脳より100万倍も速い同期処理をしているわけです。(それなのに脳のほうがまだ汎用的な知能を持っている!)
その謎の同期作用にもしかしたら「量子もつれ」が関与している可能性が出てきました。
今回は、個別部位での量子もつれを発見しただけです。ただ、1つの量子もつれペアが広範囲に広がる(交換される)可能性は以前から指摘されており、「量子通信」として研究が進められています。
人間に限らず、生物内での量子効果は以前から発見されていました。ただ、今回は脳の同期処理という重要な役割であるため、人類の知能の解明に貢献するかもしれません。
おそらく他の研究グループからも追検証含めて同じような研究が進められるでしょう。
しばらくは、この研究の発展に意識を集中してみたいと思います。
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