エルキャピタン、スパコン界の新王者に:エクサスケールと価値の変容
以前に、コンピュータが「エクサスケール」(過去に人間の脳の処理速度と考えられていたレンジ)に達した話題を取り上げました。
先日行われた(第64回)スパコン性能Top500が発表され、新参の「エルキャピタン(El Capitan)」が、従来の王者を上回ったことで話題になっています。
上位ランキングは以下の通りです。
ということで、上位3機がエクススケールを記録したことになります。
颯爽と登場したエルキャピタンですが、下記が公式サイトです。国家核安全保障局の所轄ですので、安全保障のイメージが強いです。
実際上記公式サイトによれば、このスパコンは、
核関連施設の備蓄管理に加え、国家安全保障・材料発見・慣性閉じ込め型核融合向けモデリング&シミュレーション、そして人工知能、機械学習コードにおいて国家に競争力を与える作業に使用されるようです。
核融合モデルの個所は分かりにくいので、過去投稿で補足しておきます。要はレーザで物理的に水素を閉じ込める物理的な実験場を用意しなくても、ある程度コンピュータ上で実験が賄えるということです。
今回の実測値は約1.74エクサフロップスでしたが、公式サイトによれば、理論的には2エクサフロップスに達し、100万台のスマホ同時処理に相当するとのことです。エクサ単位で聞くよりこちらの例えのほうが腹落ちしやすいですね。
前回の投稿で取り上げたAI処理に特化したHPL-AIは、現在HPL-MxPと改名され、下記がトップ3となりました。計測値は割愛しますが(上記サイトに記載)1・2位が際立っています。
1位:Aurora
2 位:Frontier
3 位:LUMI
4位:富岳
日本の富岳が(上位とはいえ)なかなかパッとしないように見えますが、実はHPCG(High Performance Conjugate Gradient)部門では10期連続の1位を維持しています。
この計算は連列方程式でよく使われる解法(共役勾配法)であることから、産業面での評価は高いものです。
最後に、このスパコン合戦は一時期話題を集めていましたが、生成AIによるインパクトで若干影が薄くなっている感も否めません。
生成AIもHPCといってよいスケーラブルなシステムですが、それは実際に問いに対して正確に回答できるかを測るベンチマークで評価されています。
処理速度より実効果が問われる時代になってきたのでしょう。これはビッグワード共通の試練なのかもしれません。