メタバース作者の作品から未来を探る
最近毎日のごとく目にする「メタバース」。
大まかにいうと、
「VRなど仮想現実を満たす技術などを使っての社会的な活動」
を指す言葉です。
「メタバース始めました」的な宣伝記事はちょっと敬遠してますが、その要素技術と社会へのインパクトはとても興味があります。
Google Trendで、検索人気推移を覗いてみると2021/11から急浮上、やはり旧Facebookが社名を「Meta」に変えた影響がやはり大きいですね。
元々の語源は、1992年の「スノウ・クラッシュ」というSF小説で、マーク・ザッカーバーグもファンの一人です。
ネタバレは避けますが、メタバースの表現については、おそらくは最近のSF映画(「レディプレイヤー1」とか)を見たほうがより解像度が高いかなと思います。
むしろ、それを1992年時点で詳細(ディテールが作者の売りです)に文字で表現した作者の先見性と描写力に舌を巻いてしまいます。
今回は、その作者の和訳作品(うち、賞を獲得したもの)を中心にテーマを取り上げて、未来社会を考える基礎材料を提示してみたいと思います。
まず、この作者「ニール・スティーヴンスン」について。
1959年生まれで科学雑誌にも投稿するノンフィクションライターとしても知られています。以下参考情報として引用しておきます。
実は、ザッカーバーグだけでなく、GAFAM(今はGAMAM?)創業者の多くが彼のファンを公表しています。
特にAmazon創業者のジェフ・ベゾスは、彼が出資した宇宙開発企業「ブルーオリジン」のアドバイザーとして彼を招聘していました。(現在は離れているようです)
1.ダイアモンド・エイジ(1995)
1996年度のヒューゴー賞とローカス賞をW受賞。
国家集権管理から、宗教・趣味などを単位とする集合体へ移行し、何もかもをナノテクで制御できる未来を記述。
本作品に出てくる電子ペーパーがAmazonのKindle着想になったことでも有名。
2.クリプトノミコン(1999)
2000年ローカス賞 受賞。
第二次世界大戦から現代にわたって「暗号」をテーマにしたSFと歴史を融合した小説。作品ではデジタル通貨の概念も登場し、今の暗号通貨を連想させます。
3.七人のイヴ(2018)
受賞はしてませんが、ビルゲイツが賞賛し、オバマさんが任期中(?)に愛読したとされる作品。
月が7つに分裂して地球に降り注ぐことが判明し、どのように人類を脱出して種を存続させるかがテーマ。
そんなニールさんが2021年末に出した最新作がこちら。
4.Termination Shock(2021)
まだ未邦訳で私も読んでませんが、テーマは「気候変動」です。
あくまでレビューからの推察ですが、大富豪たちが「気候工学(ジオエンジニアリング)」を駆使して立ち向かう様子を記載しているようです。
他の未邦訳作品を眺めてないので憶測ですが、なぜか徐々に彼の作品が未来から現実に近づいてきているような感覚を持ちます。
もはやSF作品はFictionでなくなりつつあります。
実は「スノウクラッシュ」も、私が面白かったのはメタバース設計自体よりも、国家体制とあるトリック(これはネタバレに近いためテーマも割愛)でした。
「国家のあり方」は彼の作品底流に流れるテーマのように感じます。
本作品でも、米国が経済的に低落し、富を持った者たちが管理する「フランチャイズ型国家」の社会になっています。
実現してほしくないと思う一方で、国家という近代の発明が今後も明るい未来を保証するわけではないと、昨今の国際情勢を眺めていると感じてしまいます。