「オッペンハイマー」映画を観て
今回は、前回の書籍に続き、2023年に公開された映画「オッペンハイマー」を観た感想を書いてみたいと思います。
書籍からある程度は想像しましたが、これはSF作品ではなく政治闘争というか人間ドラマに近い作品です。
時系列はレッド・パージで尋問(形式的には聴聞会)を受けるシーンを軸に、都度過去の出来事がフラッシュバックする構成です。
書籍も読んでいたのでなんとかついていけましたが、登場人物が時空(しかも今回はカラーと白黒も駆使)を超えて入れ代わり立ち代わり登場するので大変でした。改めて、これが時間の魔術師ノーラン監督の作品であることに気づかされましたね。
もしノーラン作品を知らない方は、ぜひどれでもいいので触れてみてください。なにがしかの形で時間がテーマになっています。(一番分かりやすいのは出世作ともいえる「メメント」)
書籍と同じく、映画でも一番労力をかけているのはレッド・パージ、特にオッペンハイマーを貶めようとした元米国原子力委員長ストローズとの確執でした。
しかもその引金として「アインシュタイン」が登場します。
個人的にはこのあたりが映画の見どころでした。(次がトリニティ実験)
アインシュタインが晩年所属していたプリンストン高等研究所で、ストローズは戦後にオッペンハイマーを所長として任命します。
その下見で訪問したオッペンハイマーが、たまたま池のほとりに佇むアインシュタインをみかけて一人で挨拶にいき、何かを語り合っています。
そこにストローズが駆け付けると、アインシュタインにガン無視されてしまい、もしかしたら自分の悪口を言ったのでは?と懐疑心が生まれます。
その種が萌芽したのが、ストローズがアイソトープ(放射線医療機器)を輸出禁止にすべきと主張したことへの、オッペンハイマーの侮蔑的な反論でした。これは映画で何度もしつこく登場してきます。
ストローズの陰湿で老獪な演技も見事でしたが、脇役ながら印象に残ったのが聴聞会でオッペンハイマーを責める方です。どこかで見たことがあるので有名な役者でしょうね。(ゴーストバスターズの一人だったかな?)
加えてオッペンハイマー自身も、原爆開発への後悔に苛まされ受け身状態です。作品内でも妻からファイティングポーズをとりなさい!と叱られてしまう始末です。
おそらく見せ場は原爆開発(マンハッタン計画)もあったのだろうと思いますが、結構登場人物を絞っていたので、個人的には推しキャラ(ノイマンとファインマン)が登場せず、物足りなさを感じました。
史上初の原爆実験にあたるトリニティ実験も、音声のギャップを使った面白い演出もありましたが、期待値が高すぎたせいかやや拍子抜けでした。
オンデマンドも国内で間もなく配信される予定みたいなので、細部は改めてそちらで確認してみたいと思います。
何よりもノーラン作品なので、まだまだ隠されたトリックなどがあるかもしれません。
取り急ぎの所感でした。
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