ダークマター発見への力強い一歩
Sciense誌に、ダークマター(暗黒物質)に関する記事が載っていました。
ダークマターは、既に有名になりましたが、宇宙全体の約4分の1を占めるといわれている未確認の存在です。(我々が発見済みの原子や素粒子などはそれよりはるかに少ない数%です!)
ようは、
世界最大のダークマター検出器で、初めて結果が発表され今後も期待されている、
という話です。
結論だけ言うと、まだ発見には至っていません。
物理学的なアプローチとして、「仮説」、つまりダークマターはこういった物質(または現象)だろう、というあたり付けをします。
今、ダークマターの最有力候補として「WIMP」というくくり方をします。
これは、Weakly Interacting Massive Particle(弱く相互作用する質量粒子)の略で、WIMP自体も「弱虫や怖がり」などを指すややスラングっぽい英単語です。
これは偶然ではなく、名付けた科学者たちの「遊び心」です。
これについては、過去投稿したので引用しておきます。
さて、WIMPはあくまで分類方法で、上記記事にもあるとおり具体的な粒子名まで候補が絞り込まれています。
過去には、ノーベル物理学賞を受賞した小柴さんが検出に成功した「ニュートリノ」も一時期ダークマターの候補だったのですが、今では観測値より軽すぎるということで否定されています。
ここで改めて、冒頭記事にある世界最大級のWIMP検出機について紹介します。
LUX-ZEPLIN(通称LZ)は、米国サウスダコタ州の地下約1500mで動作する次世代の実験機器です。
彼らの仮説として、WIMPはビッグバンの後に自然に出現し、陽子の約100倍の質量があれば、ダークマターを説明するのに十分な数で残るはずと考えています。
その後銀河に浸透し、私たちの人体すら通り抜けることさえありますが、時には原子核に衝突します。
したがって、WIMPかどうかを見分けるために、他の邪魔が入らない地下深くの検出器で液体キセノンを並べて衝突現象を調べています。
衝突すると、下図右のようにフラッシュ現象を引き起こします。
これは従来と類似手法で、中国のPandaX-4T、イタリアのXENONnTが同じような実験機器でダークマター検出を目指しています。
実は、今回のLZによる発表では、既にその衝突を確認しました。
ただ、その数値を見る限り他の放射性同位体との衝突の可能性がある、としてまだダークマター発見には慎重な態度です。(ここは深堀調査を期待したいですが・・・)
ですので、今回は、あくまで世界最大能力を持つ実験機器の起動と実験結果の報告で、正常動作を確認したという意味合いが強いかもしれません。
最後に、WIMPのなかでも特に有望視されている2つ粒子を紹介しておきます。
まず1つが「ニュートラリーノ」と呼ばれる素粒子で、分類として「超対称性」粒子とも呼ばれます。
超ざっくりいうと、我々が今まで見つけた粒子は、「ボース粒子」と「フェルミ粒子」(いずれも物理学者から命名)の2種類に大別され、それらの間を交換することを「超対称性」と呼び、その名前の1つが「ニュートラリーノ」です。
もう1つが「アキシオン」です。
これもざっくりいうと、「対称性の自発的破れ」が起こった際に生じると予言されている素粒子です。「自発的破れ」自身については過去にも投稿しているので、引用だけで割愛します。
ダークマターについては、他にもいろんな仮説があり、今でも存在しないという説すらあります。途中での過去投稿タイトルにあるとおり、存在しない銀河は実際に観測されています。
素人からみると正直どれが確からしいかは分かりません。
ただ、今回稼働したLZ検出器と、同じくこの夏に観測を開始するジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、ダークな時代に光を照らしてくれることを期待しています。