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植物は量子コンピュータ:光合成に潜む驚きのメカニズム

前回の補足です。

動物(渡り鳥)は量子効果を活用してコンパス機能を獲得している、
はなしです。

動物だけでなく、植物にも同じような量子効果が確認されています。

以前に、人工光合成について触れました。

新しい触媒を発明して光電変換率をたかめた研究のはなしです。今週はノーベル賞Weekなので期待が高まります☺

実は、この本家(?)となる植物の光合成でも、量子効果が寄与しているのでは?という説が濃厚になっています。

まず、光合成の確認です。下記サイトがわかりやすくておすすめです。

上記記事内の図

上図の意味合いをくくると、
左図→光をエネルギーに変換(明反応)
右図→エネルギーを養分に変換(暗反応)
となります。

このうち、明反応と呼ばれる、光をエネルギーに変換する効率は100%に近いことが分かっています。
この異常なまでに高すぎるエネルギー伝達のメカニズムは長年の謎でした。

2007年に、その謎の解明に一気に近づく研究成果が発表されました。

ようは、
植物がエネルギーを伝達する手段として、量子効果による最適なルート探索が行われていた、
というはなしです。

対象としたのはFMO複合体とよばれるたんぱく質です。

ここに波長が短いマイクロレーザーを照射することで、従来より精密に分子内の動きを追うことが可能になりました。

具体的にはフェムト(1000兆分の1)という長さまで刻んで電子の動きを追うことが出来ます。このあたりは2023年のノーベル賞とも絡むので、余談ながら関連記事を載せておきます。

この超精細なビデオを使うと、光エネルギーを受けて化学エネルギーに変換するメッセンジャ(=電子)が振動を行っていることを発見しました。これがいわゆる量子コヒーレンス(干渉)と呼ばれる物理現象です。


量子化されているため、電子は同時に複数の状態を持つことが出来ます。これは一般的に「重ね合わせ」と呼ばれます。常識的にはピンとこないと思いますが、それが実現するのが量子の不思議な世界です。

そしてこの電子群が同時にゴール(化学エネルギーへ変換するたんぱく質)への道を目指すことで、結果として最も最短経路に到達、つまりエネルギーロスが最も少ないルートを探索することが出来るわけです。

ちなみに、産業への展開が期待されている「量子コンピュータ」もこの原理で並列計算をすることが出来ます。1つだけ過去記事を引用しておきます。

ということでやや印象的な表現を使うと、
植物の光合成(明反応)は量子コンピュータと同じことを行っている、
というわけです。

ただ、この実験ではマイナス180度という極低温での環境で、現実世界とはかけ離れたものでした。

そのあと2010年に、さらに一歩進んだ研究成果が発表されます。

差分は、
常温で同じような量子効果を発見した、
ということです。

光合成は我々含む地球の生物にとって大前提となる作用ですが、やっと最新の科学技術を駆使してその秘術に近いプロセスが解明されてきたわけです。

このように、生物の中に潜む量子効果は他にも報告されていますが、まずは植物の超能力としてここまでにしておきます。

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