世界の一部で進む監視社会への功と罪
監視カメラが世界的に急増しているのをご存じでしょうか?
昔なら非日常的な響きでしたが、今では個人の防犯用途などネットの普及もあり、廉価で手に入ります。
2018年時点での、公共による監視カメラの国別集計結果をみつけたので引用します。
TOP3のスケールが群を抜いているので、ランキングを載せておきます。
2020年時点の調査によると、世界全体で約8億台と言われており、すごいのは都市別に見た時のランキングです。下記に最新版が載っているので合わせてご紹介します。
全体のマクロ数値は人口規模もあるので中国が一位なのはそこまで驚きはなかったです。
ただ、都市別で見ると上位20都市のうち16都市(1,000人あたりのカメラ数に基づく)を占めます。
しかもComparitechの調査によると、世界の監視カメラの過半数は中国にあるとの表現もあります。
これに関連して、今世界最大の監視カメラメーカ「Hikvision(ハイクビジョン)」が注目されています。
ようは、
世界最大監視カメラメーカが、新疆ウイグル自治区での人権侵害に関わったとして米国が制裁を加えようとしている、
という話です。
中国は、国全体として監視を強化することで、国(共産党)にとっての害悪な行為を取り締まっています。
このあたりは2022年に和訳版として出版されたこちらの書籍に生々しくその経緯とウイグル自治区での様子が描写されています。
なかなか過激な内容なので、そのまま要約することは困難です。関心のある方はぜひ一読を進めます。
実はこの中では、単に政治社会動向だけでなく、AIや監視カメラの技術動向とも結びつき、単に国家の号令だけでなく、民間の技術も巧みに組み込んでいます。
一般的には、CCTVは閉回路、つまりその中で閉じた映像で通常はこれで、例えば店内での万引き防止に努めているわけです。
ところが中国はネットワークカメラをいち早く採用し、すると原理的にはネットでいつでもデータ連携が出来るわけです。
従って、例えばオンライン決済など複合的なデータをAIで解析して、日常と違う行動をとっていないのか?をチェックするわけです。
米国では、上記のHikvisionのとおり、加担した企業はブラックリストとして販売停止を働きかけます。ファーウェイCFOがカナダで逮捕された事件はまだ記憶に残っている人もいるのではないでしょうか?
この動きは米国だけの話ではなくなってきています。
もう1つ最近話題を呼んだ近い出来事が、Clearview AIという顔認識ベンチャーへの販売停止の動きです。
これは米国だけでなく、多くの国が賛同して民間企業では利用をやめる方針です。それでも政府筋ではまだ利用されており、やや見えない怖さを感じます。
ちなみに、中国の治安維持プロジェクトは「スカイネット(Skynet)」と名付けられています。
ターミネーターに出てくる架空のAIも同じ名前、自我を持ち人類を滅ぼすややディストピア的な響きを持ちます。
一方、下記の書籍では、ウイグル自治区での非人道行為を非難したうえで、中国が試みている新しい統治実験について多角的に触れています。
何もかもくくって感情的に否定することもまた問題ですが、人間としての最低限の尊厳を奪う行為だけは断固反対したいと思います。