個々が凄いぞStarship
前回、軌道テストを間近に控えるStarshipのさわりについて触れました。
投稿時点でも日本時間4月20日夜に実施される予定です。
前回書ききれなかった、個別のすごい点について触れてみたいと思います。主に下記の記事を参考にしました。
まず、前回触れた通り、外形と積載容量は、現時点で史上最大です。特に100t以上もの積載容量を誇るというのは衝撃です。
上記の記事を投稿した惑星科学者は、TEDトークでもその意義について力説しています。
ただ、(上記動画でも触れてますが)積載容量が大きくても燃料が足りないと意味がありません。
Starshipは、一旦宇宙船(厳密にはここがStarship)がブースターから切り離されて地球の低軌道上を回ります。
その宇宙船に対して補給船が別途やってきてドッキングして補給し、月の先にあたる火星までの燃料を補給します。
飛行機で言う「空中給油」に相当しますが、がっつりとドッキングするのでよりスペクタクルな風景になるでしょう。
公式サイトにイメージ風景があるので引用しておきます。(英語部は和訳)
そして、その肝心の燃料ですが「液体メタン」と「液体酸素」を採用しています。
一方、普及機とも言えるファルコン9は、化石燃料(RP-1)と液体酸素で大きく異なります。
一見同じエンジンと燃料を使った方がノウハウが蓄積してステップアップしやすいと思うかもしれませんが、そもそも両者は目的が異なります。
Starshipの目的は地球低軌道(地上高度2千km内)ではなく「火星」です。
火星には、地下に水と二酸化炭素が存在する可能性が指摘されており、これらからメタンを合成出来る可能性があります。(あくまで可能性です)
つまり、現地でエネルギーを補給できるから、というわけです。
そして、原料が異なるので想像つくと思いますが、搭載エンジンもファルコン9(そしてその後継のヘビー)とは異なります。
通称「ラプターエンジン」と呼ばれ、1段目・2段目それぞれにクラスタ、つまり複数の集まりで構成しています。(一部がうまく稼働しなくても稼働出来るようになっているようです。冗長性を持たせたのでしょう)
ファルコン9(&ヘビー)含めて、液体燃料エンジンで普及しているタイプは、ガスジェネレーター方式と呼ばれます。
ラプターエンジンは、「多段燃焼サイクル」と分類されます。JAXAのHⅡAロケットもこれに分類されます。
ガスの制御が難しいといわれていますが、その代わりに燃焼効率と推力は期待できます。
さらには、量産も見据えた設計を目指しており、最終的には「1回あたりの打ち上げコスト100万ドル」を目指しています。
火星到着という話題性の高さが目立つStarshipですが、それ以外にも用途は考えられており、代表的なものを列挙して締めておきます。
ペイロードの軌道配置(Starlink最新版も打ち上げ予定。JWSTよりも大規模な宇宙望遠鏡も)
月面輸送(無人・有人)
火星輸送(無人・有人)
地球内大陸間輸送(無人のみ?)
最後について補足すると、世界のどこでも(降りれる空港があれば)1時間で着くそうです。
ただ、結構な加速度がかかるため、人間が載れるか(耐えれるか)はまだ未定です。
個人的には火星にまっしぐらに進んでほしいですが、あまりにも夢だけを追い求めると持続性が厳しいので、うまくバランスをとって開発を進めてほしいです。
まずは4月20日の軌道テストを見守りたいと思います。