巧妙で光明な光合成と「進化」の意味
地球の酸素は植物の光合成で生成される。小学生でもなじみの反応ですが、その過程はまだ研究が続いています。
そんな光合成の研究で面白い発見が報道されています。
要は、
光合成を消失する途中段階にある状態の葉緑素をゲノム解析で発見した、
という話です。
光合成の誕生は藻類(シアノバクテリア)で始まったので、それが逆に機能消失することがあるというのは「進化とは何か?」を考えさせられます。
そもそも当たり前のように受け止めている「光合成」について調べてみると結構謎が多い反応であることが分かりました。
結構今の酸素を生む光合成のプロセスは複雑な仕組みなので、ざっくりとその主な流れを紹介します。
もう少し直感的でもいいので詳しく知りたいかたは、下記動画がお勧めです。
いずれにしても、光合成の初めの関門はStep1、つまり後工程を担う工場に水素イオンを渡すまでの、光と水を酸素と水素(イオン)に分解する機構です。これは厳格に言えば、現時点でも全てが解明されていません。
ただ2011年に、その作用を及ぼすたんぱく質(PSⅡ)の原子構造が解明され話題を呼んでいます。
上記の結果、反応に寄与する原子群は、極めて「不安定」な構造であることが分かりました。
これは分子としては稀な構造らしいので、遺伝子の突然変異など、何か偶発的な出来事によるのかもしれません。
光合成生成解明の一方で、冒頭の研究背景のように、光合成の機能を消失する藻も存在します。寄生性や病原性の種もそれにあたります。一見自身で栄養を作れるというのは「生存に有利」に見えるのですが、どうして不利に見える機能消失を引き起こしたのでしょうか?
その謎を解くには、「進化」という言葉の意味からとらえなおす必要があるのだろうと思います。
進化といえば「ダーウィン」の自然淘汰が連想されます。つまり適者生存(弱肉強食はちょっと乱暴ですかね)の世界ですね。
ただ、1960年代から中立進化説が提唱されており、必ずしも環境に有利な遺伝子だけが生存に寄与していたわけではない、むしろランダム性のほうが高い、ということを統計的に唱えたものです。
現時点では100%定説とまではいえませんが、「進化」というイメージを見直すには示唆に富む学説です。
確かに一歩引いて見ると、「進化」という語感は、なんとなく生物として優秀になっていく過程、という響きを与えます。
ただ、それはあくまで人間の主観的な価値観にすぎず(優秀の定義は人間同士でさえ曖昧ですよね)、自然にとってはある意味迷惑な押し付けなのかもしれません。
冒頭と途中の記事で分かった巧妙な仕組みの発見から、人間中心思考ではなく、他の視点から見た意味を見出すのも、光明が差す要因になるのかもしれません。