カーツワイルの「シンギュラリティ」最新版その6:未来の健康・福祉
前回の続きです。
ようは、
短期的には雇用消失など混乱は起こるかもしれないが、長期手に見れば新たな雇用を生む、というはなしです。
今回は、第6章「健康と福祉の次の30年」です。
この章では、2020年代から2040年代にかけての健康と長寿の進歩について触れています。
今までの章でも触れましたが、2020年代は、AIとバイオテクノロジーの融合がポイントになってきます。
AIは莫大なデータから学習し、医療の進歩を加速させます。例えば、新薬開発、疾病監視、ロボット手術などで既に成果が出ています。AIは何兆もの分子から最適な治療法を見つけ出し、臨床試験の効率を大幅に向上させます。また、画像診断や手術でも人間の医師を凌駕し始めています。
新薬開発をAIが担うことも実績を上げています。過去最大の応用例としてコロナワクチン開発をあげています。中国からウイルス遺伝子配列が公開された2日後には、モデルナがmRNAワクチン配列の候補をAIを活用して探し出し、わずか2か月に初の臨床実験、そして2年で(承認を受けて)提供することを可能にしました。
他にも、タンパク質3次元構造を解析するGoogle DeepMind社のAlphaFoldが、生成AIのきっかけとなったTransformerを組み込むことでさらに性能を上げた例を挙げています。
補足すると、2024/5にその最新バージョンが発表されています。詳細は過去投稿に委ねますが、タンパク質以外にも用途が広がったのが特長です。
次にやってくる2030年代と2040年代は、ナノテクノロジーの時代となります。ナノボットが体内を巡回し、細胞レベルで修復や強化を行うことで、人間の寿命は大幅に延びると予想します。
ナノテクノロジーの進歩により、分子レベルでの製造が可能になり、ほぼすべての物理的製品を安価に生産できるようになります。
健康面では、ナノボットが体内を巡回し、がん細胞を特定・破壊したり、遺伝子を修正したりすることが可能になります。また、人工的な血液細胞や臓器も開発され、心臓発作や呼吸不全のリスクを大幅に低減できます。
最も重要な応用は脳の増強です。ナノボットが脳組織に導入され、損傷を修復したり、機能しなくなったニューロンを置き換えたりします。また、脳とコンピューターを直接接続することで、思考で機械を制御したり、クラウド上の「デジタル大脳新皮質」にアクセスしたりすることが可能になります。
そして2050年代までには、人間の体と脳は生物学的限界を超えて再構築されると予測しています。最適化された体を自由に作り出せるようになり、より速く走ったり、魚のように海中で呼吸したり、翼を持って飛んだりすることも可能になるかもしれません。そして思考速度は現在の何百万倍にもなり、物理的な身体に頼る必要がなくなるとしてこの章を締めています。
この章だけを読むと荒唐無稽に聞こえますが、本作ではそのエビデンスを丁寧に近年の進捗を添えていますので、興味持った方はぜひポチって見てください。