月面での「住」宅事情
我々地球人にとって近くて遠い(50年以上人類は足を踏み入れてない)「月」は気になるので触れてきました。
そんな月面上で、なんと酸素や燃料の生産可能性を中国の研究グループが明らかにしました。
要は、
月面土壌サンプルから、太陽光で水と二酸化炭素を酸素や水素、メタン、メタノールに転化できることが出来た、
という話です。
まだそれに必要な諸条件は明らかにしてませんし、国家プロジェクトなので明らかにしない可能性もありますが、人類の宇宙開発の視点では画期的な出来事です。
元々NASA主導の「アルテミス計画」は、月を基地にしてそこから火星以遠の深宇宙と呼ばれるエリアへ探索する方針です。
月での基地化、つまり長期間人類もそこで社会生活を営む必要が生じるため、初めの大きな関門になるわけです。
私が知る限り、基地を月面上にどこまでつくるかは未定で、むしろ軌道上での滞在宇宙船(今のISSの拡張イメージ)のほうが先行するかなと思います。
とはいえ、中国だけでなく各主要国で既に月での活動を見据えた動きが着々と進行中で、たとえばその1つカナダでもこんな記事が最近流れています。
今回の中国の研究成果で、もしかしたら、各国の居住を視野に置いた方針が加速するかもしれませんね。
(米中の宇宙開発バトルが激化しないことを望みます)
さて、今回はそんな時代を夢想して、月面上に住む構造物に絞って紹介してみたいと思います。
酸素や燃料はもちろん大事ですが、意外に住む構造物も抱える課題はあります。
まず、月面上には超微小なガラス片に近い「レゴリス」という微粒子が積もっており、最後に月着陸を行ったアポロ17号の宇宙飛行士もその被害を被っています。(その影響で「花粉症」になったとも・・・)
1つ記事を紹介しておきます。
これは、宇宙服である程度対処は可能ですが、逆に言えば外に出るにはそういった特殊スーツが必要で、かつ活動においても常にその微粒子が害を成さないような設計が必要ということです。
そしてもう1つ重要なのは、「宇宙からの被ばく」で、宇宙線や太陽風をさします。
過去にもそれを「地磁気」が守ってくれているという話をしました。
この対処も、上記同様宇宙服でも可能ですが、何もかも特殊スーツに頼ってはなかなか社会活動の広がりは困難です。
今、居住空間として有望視されているのが、上記の被害がある程度抑えられた「地下空洞」の活用です。
実は、月面には「溶岩チューブ」と呼ばれる地下空洞が確認されています。
これは日本の研究グループが発見したもので、太古の月で溶岩が流れた跡で、山腹にある風穴のような構造が形成されたと推測されています。
ただし、地下空洞であることからここに居住空間をいきなり建設すること自体も難易度が高い試みです。
そこで、まず第一歩として日本のJAXAが民間・学術機関と共同で企画しているのが、簡易な膨張構造物、シンプルに言うと風船型テントです。
こちらは2019年にプロトが公開されましたので、紹介したニュースを1つ引用しておきます。
まだ、具体的な実施計画までは進んでいませんが、こういった仕組みづくりは結構既存の民間技術も組み合わせると面白そうです。
むしろ、その過程も含めて社会全体で多様なアイデア・技術を持ち寄って、総合的な視点で人類の社会進出を考えることが重要なのかもしれません。
今回は「住」環境だけに絞りましたが、月面上で暮らすには他にもまだまだ課題が山積です。
また折を見て最新ニュースも交えてお届けしたいと思います。