シン・ゴジラが示唆する生物の進化
前回、ゴジラ-1.0の中で行われた作戦を科学的に見た話をしました。
ようは、
ゴジラを深海に沈めて高圧でやっつけよう、という狙いです。
難点をあげると、もし、ゴジラが普段深海に身を潜めていたら効力は弱いかもしれません。(作戦結果は触れません☺)
今回は、近未来を舞台にした「シン・ゴジラ」を題材に、ゴジラの生物学的な謎について考察してみます。未視聴の方は自己責任でお願いします。
余談ですが、ゴジラ-1.0を記念してこちらの作品もモノクロ版が配信されています。
まずは、作品でも話題となったゴジラのエネルギー源からです。
あれだけの熱線を放出するためには、相当なエネルギーを内蔵する必要があり、やはり「核反応エネルギー」が一番しっくりきます。
作品では当初から「ゴジラは核廃棄物を摂取して進化した生物ではないか?」と推測されています。
実際ゴジラが通った後に放射能が検出されるのですが、奇妙なことに「未知の新元素」も見つかっています。(開始43分ごろのやりとり)
その謎を説明すべく、作品では下記のような仮説に誘導していきます。
「ゴジラは元々は放射線廃棄物を摂取していたが、水素・窒素のような軽元素を細胞内に取り込む際に核融合反応で新元素へ変換し、その崩壊熱(核分解)をエネルギー源としている」
この核融合反応がなぜ可能なのかは作品内では詳しくはふれてませんが、ゴジラは人類の8倍もの遺伝子情報がある、ということから新たな進化形態を想起させています。
この遺伝子情報について補足しておきます。
遺伝子の数(ゲノム数と解釈)でいえば人類は最強ではないです。1つだけ生物比較したサイトを紹介します。
そもそも「進化」という意味は恣意的で、過去にもふれたのでそれ以上は割愛します。
なお、2003年に完了したヒトゲノム計画で人類のゲノム数は多くないことが分かりましたが、それらを発現させる仕組みの解明が進められています。もしかしたら遺伝子レベルでの優位性がここで発見されるかもしれません。
このあたりで遺伝子の話はとめて、話をエネルギー源に戻します。
まず、謎の「新元素」についてですが、理論的には可能です。
以前に同じくSF作品を基に関連する話をしたので載せておきます。
ようは、
まだ未発見の超重元素(ウランより重い元素)でも、原子核が安定的に存在出来る可能性がある、
という話です。
原子核は、陽子と中性子の集合体ですが、「(二重)魔法核」と呼ばれるマジカルな組み合わせで、「安定の島」と呼ばれる安定ゾーンが理論的にはあり得ます。
ただ、一番やっかいなのは、この新元素を創る核融合反応をどのように実現するのか?という点です。
ここからはより推測の度合いが高まりますが、ゴジラ細胞内に「共生」する特殊な微生物がその元素変換を促す役割をもっている、というのが妥当かなと感じました。
作品内でも、それを抑制する極限環境微生物がゴジラの細胞膜に「共生」しているという設定にしています。
現実世界で有名な「共生」は、人類含めて主な生物の細胞内にある「ミトコンドリア」です。元々独立した生物でしたが、エネルギー変換装置として取り込まれました。過去の投稿も添えておきます。
ただ、元素変換を可能にするには、普通は相当な熱エネルギーが必要です。例えば、人工的な核融合反応では、常温型でも1000度程度です。
その謎の微生物は、ゴジラが摂取した放射性物質を崩壊させて核融合反応を促す機能を有していたのかもしれません。
いずれにせよ、そのような特殊機能を持つ微生物は極限環境、おそらくは深海で生息してきた可能性が高いと思います。(次が宇宙からの飛来ですが、ちょっとご都合すぎ・・・)
全体を俯瞰して興味深いのが、ゴジラが段階的に形態変異する過程が、生物の過去(水生動物)から現在、そして未来(人類が開発中の核融合反応)の進化を示唆しているように感じられる点です。
ただ、もし深海での誕生由来となると、前回触れた「ゴジラ-1.0」での深海圧攻撃は・・・と下種な勘繰りはやめて、素直にこの歴史的大作を楽しみたいと思います。