2024年ノーベル医学/生理学賞:遺伝子制御を担うマイクロRNAの発見
2024年のノーベル賞医学・生理学賞が発表されました。
今回は、「mi(マイクロ)RNA」を発見した二人に贈られました。砕みくだいてその業績について紹介します。
名前のとおり、マイクロ(ペアが20数種類)なRNAで、21世紀になって注目が集まった比較的新しい物質です。
おそらく遺伝子の歴史から触れたほうが分かりやすいと思います。
そもそもの始まりは1953年に発表された2重らせん構造を持つDNAでした。このなかの階段に相当する塩基配列が親から子へと遺伝を担う物質だ、という世紀の大発見です。
1960年代には、DNAからどのように生命の基礎であるたんぱく質が形成されるのかも解明されます(セントラルドグマ)。ざっくりいえば、下記のステップを踏みます。
DNA→(転写)→RNA→(翻訳)→タンパク質
この媒介を担うのがRNAです。RNAにもいくつか役割で頭文字がついており、上図のm(メッセンジャー)RNAとあるのが、まさに2023年のノーベル賞のテーマでした。RNAがいかにホットなのかがわかりますね☺
ただ、上記のプロセス解明で遺伝子は完全理解!と思いきや、そんなに簡単ではないことが分かってきます。
例えば人体だけでも、神経や筋肉など多彩な細胞の種類があります。これらの違いを遺伝子はどのように制御しているのか?
実は遺伝子配列だけでなく、その情報をさながらスイッチのごとく発動させる仕組みが上乗せされていることが分かってきます。
例えるなら、遺伝子配列自体はハードウェアとしてのコンピュータで、それを基盤にして動かすソフトウェアプログラムがあったという感じです。
このような遺伝子を制御する仕組みを総称して「エピ(〰より上の)ジェネティクス」と呼びます。それ以上の詳細は過去記事に委ねます。
長くなりましたが、このスイッチに相当するものの1つが、今回表彰された「mi(マイクロ)RNA」だった、というわけです。
この発見物語も面白いので改めて紹介したいと思いますが、今回はなによりも、それがもたらす意義について触れておきます。
上記で触れたとおり、miRNAは人類含めて多様な細胞の形成に影響していることが分かってきました。言い方を変えると、miRNAが正しく機能しないと正常な細胞や組織が形成されず、実際に疾患の原因であることも分かっています。
miRNAの解析は21世紀以降急速に進んでおり、今では数万種類のmiRNA配列が特定されています。
そして今では新しい治療方法として活用しています。1つ過去投稿記事を。
ようは、
miRNAを伝達させるスイッチ経路を作ることで、免疫機能を活性化させた、
というはなしです。
そして人類最大の病ともいえる「がん」に対しても、miRNAの変異が引き起こす可能性も指摘されています。つまり、miRNAをコントロールすることができればがん治療にも貢献するということです。
またどこかで深堀したいと思いますが、まずは受賞者の方々おめでとうございました。