「目」のつけどころはバクテリア?
五感のうち「視覚」はおそらく誰もが一番重要、または一番失いたくない感覚、というのではないでしょうか?
視覚をつかさどる「目」の誕生によって、一気に生物は進化したともいわれています。
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どちらかというと、「目」の誕生がカンブリア紀の生命大爆発を生んだのではないか?という仮説です。
そして目が誕生した経緯はざっくりと直前に起こったスノーボールアース仮説による淘汰圧では?としています。
スノーボールアース仮説については以前に書いたので省略します。
さて、改めて、こんな複雑な仕組みである「目」がどのように誕生したのか?
最近新しい説が発表されたので紹介します。(論文はこちら)
ようは、
目は、光に対する網膜の反応に関与する重要な遺伝子に貢献したバクテリアによって、予想外の後押しを受けて誕生した、
という話です。
なかなかショッキングな説です。
まず、バクテリアが遺伝子を運ぶのは、決してあり得ないことではありません。ウイルスやトランス(移動を表す接頭語)ポゾンと呼ばれる DNA 断片に含まれています。
今回の外来遺伝子がもたらしたとされるのは、光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)と呼ばれます。
光を受けとめるのは網膜ですが、それと網膜色素上皮の間の空間、網膜を覆う細胞の薄い層に存在するたんぱく質です。
脊椎動物の眼では、光が網膜の感光性光受容体に当たると、ビタミン A 複合体がねじれ、視神経を活性化する電気パルスを発生させます。
そして今回のIRBPが、これらの分子を上皮に移動させてねじれを解き、復元された分子を光受容体に戻します。なかなかトリッキーな動きですが、媒介として極めて重要な役割であるのは感じられます。
これが、細菌遺伝子(iHGT)を介して作られたということを、進化の系譜をコンピュータでたどって見出しました。
ざっくり研究の流れをいうと、動物の先祖を辿ると最も近縁の無脊椎動物にはIRBPが存在しなかったようです。(勿論それが絶対的な証拠ではありませんが)
そして同時に、IRBPはペプシダーゼと呼ばれる細菌遺伝子のクラスに最もよく似ており、そのタンパク質は他のタンパク質をリサイクルします。(オートファジーっぽいですね)
いずれにしても、生物の長い歴史である種の遺伝子が他の種に宿って新しい性能を獲得する、という興味深いケースかもしれません。
遺伝子とは違いますが、複数の生物が合体したことで有名なのは、ミトコンドリアです。
元々独立したバクテリアで、それを別の細胞に取り込まれたという説が有効です。小難しい言葉で「細胞共生説」と言われます。
しかし今回の発表は生物のミステリーをさらに深めて興味深いです。
まだ仮説にすぎませんので、今後の進展に目を光らせておきたいです。
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