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ビッグバンの2つの歴史

「宇宙はビッグバンで始まった」。
聖書の一説にも近いこのフレーズはよく耳にすると思います。

では今はどこまで遠くまで我々は見渡せるのか?その記録を打ち破ったニュースが流れました。

要は、
重力レンズ効果がたまたま重なって拡大率が拡張されたので、従来より40億年光年先にあたる、約129億光年遠くの観測に成功した、
という話です。

重力レンズ」とは、天体が発する光が、途中に重い(重力の強い)天体によって曲げられる効果のことを指します。

余談ですが、その効果がリング状にみえるものは「アインシュタインリング」と呼ばれます。もともとアインシュタインの一般相対性理論も重力レンズ効果で検証されたので、当然の名前ですね。

出所:Wiki「重力レンズ」

さて、宇宙物理ではスケールが大きいため、「遠く=過去」を意味します。
例えば、今我々がお空で見ている太陽は厳密には8分前の姿です。

ですので、今回は最も古い星を観測した、ともいえるわけですが、そもそも宇宙の年齢は何歳なのでしょうか?

現時点での最新観測によると、2013年にESAが発表した「138億歳」です。
これは当時一般紙でも発表され話題を呼びました。

・・・ということは、今回の観測した星は「宇宙の果て」に近い!
と思うかもしれませんが、そうではありません。

ビッグバンいわく、宇宙は膨張しています。
そして宇宙の膨張速度は光速を超えているため(ここでの膨張は空間なので物質の速さとは異なります)、我々が原理的に見渡せる限界はまだまだ遠い先にあります。少なくとも400億光年先までには広がっています。

ということで「宇宙の果て」には残念ながら到達することが出来ません。


せっかくですので、ビッグバンという言う言葉が生まれた歴史の話もしたいと思います。

ビッグバンの生みの親は「ジョージ・ガモフ」という科学者が知られています。(ソ連からアメリカに亡命)

ただ、厳密にいうと、この人自身が考案したのではなく、その言葉を広めた人です。

彼が活動していた1940年代は、まだ「定常宇宙説」と呼ばれる膨らまない安定した宇宙信仰者も結構いました。

その論客の代表格にあたるのが、SF作家としても知られている「フレッド・ホイル」です。
海外では天文学者がSF作家というのはちょくちょく聞きます。私が知る限り最も有名なのは「カール・セーガン」ですね。

ビッグバン誕生由来に戻ります。

実は彼が提唱する背景の1つに、重要な天文観測結果が発表されました。
それはハッブルという天文学者(元々は弁護士)が、どこを見ても遠い星ほど早く遠ざかっている、というものでした。
これによって元々定常宇宙説を唱えていたアインシュタインが、自分の仮説を撤回したのは有名な話です。

この結果も踏まえてガモフは、宇宙の初期は高エネルギー高密度の小さな原子(火の玉と呼称)から段階的に冷えていって大きな原子が生成されていくという説を唱えました。これがビッグバンの原型です。

ただ、ハッブルによる膨張の証拠を突き付けられても、ホイルは定常宇宙説を支持し続けました。かれの仮説によると、絶えず新物質が生成しているので膨張しているように見えるだけだ、というものでした。

余談ながら、当時ハッブルは計算を誤っていて宇宙年齢は「20億年」と見積もっていました。それより古い地層が見つかって問題になったということもありました。

一方、ホイルはメディア露出も積極的に行い、ある日BBCラジオで論敵に当たるガモフの説を揶揄して自分の説を主張しました。こういった感じだったようです。

宇宙の始まりは火の玉?ならば宇宙は「Big Bang(大爆発)があったんだろうね(笑)
(著者想像)

これを聞いたガモフが面白がって(本投稿では割愛しますが、彼はこういった子供っぽい性格で知られてます)自身の説にこの言葉を使った、というのが彼がその提唱者として有名になった顛末です。

ガモフの火の玉説支持者からは、上記経緯もあって「ホイルがつけた名前はいやだ」という声もあり、実際に新名称を公募したそうですが、結果としてビッグバンが定着して今に至ります。

有名となった言葉も、実は考えた人と広めた人は違うのは結構あります。
機械の知性が人間を超える「シンギュラリティ」についても同様で、レイ・カーツワイルが有名ですが、これもSF小説家が元々唱えてました。

ビッグバンについても、いつか韓国のバンド名として定着される日がくるかもしれませんね。

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