恐竜絶滅の隕石起源に新たな証拠:小惑星説が濃厚に
恐竜の絶滅について最新の研究成果がサイエンス誌で発表されました。こちらの記事です。基本情報を補足して解説します。
まず、恐竜絶滅の原因はほぼ明らかで「隕石衝突説」です。
ただ、これは科学的な証拠が積み重なってやっと陽の目を浴び、長年不遇の時代があったようです。
提唱者はウォルター・アルバレスとウルフ・アルバレスで、アルバレス仮説と呼ばれます。1980年の出来事です。
ファミリーネームが同じなのは実際の父子だからです。微笑ましい発掘の写真を挿入しておきます。(ウォルターはまだ存命)
父のウルフは高名な理論物理学者で、あのマンハッタン計画にも参画し、ノーベル物理学賞も受賞しています。
好奇心があまりに広く、専門分野以外ではケネディ大統領暗殺事件や、今回の隕石衝突についても研究を行っています。
隕石衝突説については、1950年代にも提唱されてはいましたが、その時は証拠が弱かったようです。
この仮説が強力だったのは、イリジウムというレアメタルがこの時期の地層に見つかったことです。この物質は地球内部か隕石に高濃度で存在していることが分かっており、これによって宇宙由来であろうという根拠が強まりました。
ただ、提唱当初は反発が多かったようです。その後に、世界各地で同年代にイリジウムが見つかったり、宇宙からの画像解析で墜落候補地にクレーター跡を発見したりして、この説を支持する科学者が増えました。
さて、今回の差分ですが、その隕石の成分の解析に成功し、炭素質コンドライトが含まれていることを見出しました。
そしてその飛来起源は、火星と木星の間にある小惑星集積帯からと考えられています。
ここからの小惑星飛来説を支持している人は以前からおり、こちらのシミュレーション結果によると、直径10kmサイズの小惑星が数億年単位で地球を横切る軌道に乗ることを示しています。
他にも(主に氷でできている)彗星説もあり、これは太陽系外縁からやってきたと考えられ、発見者の名称で「オールトの雲」と呼ばれています。
今回有望となった小惑星帯は、今でも地球衝突に備えた実験が行われています。有名なのは「DART」と呼ぶ小惑星の軌道を変えてしまおうという野心的な実験です。
過去の関連投稿を添えておきます。
今回の説が広まれば、過去の大絶滅を防ぐために、よりこういった小惑星対策の認知が高まるかもしれませんね。