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RNAとペプチドの出会いが生命を生んだ!?

RNAワールド仮説」を聞いたことがあるでしょうか?

RNAと言えば、「DNA→アミノ酸→ペプチド→タンパク質」を形成するときに媒体的な役割を担う一本鎖の物質です。
このRNAが、思った以上に重要な役割を担うことが分かってきて、
もしかしたら、生命の初期はDNAでなくRNAからスタートしたのでは?
というのがおおざっぱな「RNAワールド仮説」です。

その仮説に影響を与える新しい説が理化学研究所より発表されました。

要は、

初期生命は、ペプチドがRNAを媒体として新たにRNA合成を行ったのでは?

という話です。

ペプチドはアミノ酸(塩基3種類で一意的に決まる)を短め(大体50未満)につなげたもので、長めにつないだものがタンパク質です。

冒頭触れたRNAワールド仮説では、RNAが自己進化を遂げたわけですが、その進化の過程はまだ不明です。
例えば、DNAからタンパク質を作る過程を「セントラルドグマ」と呼びますが、RNAを意識(その他はバッサリ割愛)して書き下すと以下のイメージです。

DNA→2本鎖が1本にほぐれて加工されmRNAを形成→rRNAで出来ているリボゾームに運んでtRNAに基づいてアミノ酸生成

何もかもが「RNA」で出来ているというわけで、こういったRNAワールド仮説、という大胆な名称が出てくるのはうなずけます。

ただ、繰り返しですが、RNAだけで上記(含む他にもいろんなタイプのRNAが存在)のような複雑な高分子が出来たというのはまだ謎なままです。

今回は、ペプチドとRNAでRNAが合成されることを証明した内容です。

個人的に一番興味を持ったのは、RNAを合成するペプチドの選定方法です。

今回使ったのは、「ファージディスプレイ法」と呼ばれる、ウイルスに様々な遺伝子を挿入して選択的にスクリーニングする遺伝子工学手法です。
自然淘汰に近いことをファージ内で培養して高速回転で実現するイメージといえばいいでしょうか。

2018年ノーベル化学賞もこの研究の功績によるもので、適切な抗体を製造する医薬の分野で期待されていましたが、生命誕生の仮説に使うのはとても斬新と感じました。

あとは該当のペプチド自体がそもそも存在していたのか?という謎が残りますが、これについても、同研究所がその可能性を示唆しています。

今回の説を聞くと、私自身はRNA単独説を支持していたので、その心が揺らぎました。それぐらい説得力がある内容です。

ただ、もう少し踏み込むとその合成役のペプチドを初期に創ったアミノ酸はどうやってできたのか?
若干きりがないのでやめておきますが、いずれにしても今回はわき役にみえる「ファージディスプレイ法」の可能性を感じました。

特に今回のように、仮説に基づく高分子を同定する手段として、今後も思いもよらぬ用途と発見がもたらせるかもしれません。

そして何より、遺伝子編集技術CRISPERもそうですが、元は「ファージ」という生物と無生物の中間のような奇妙な存在から出来たものです。

「生命とは何か?」を改めて考えさせられてしまいます。

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