見出し画像

時空モデル:ダークエネルギーは存在しない!?

宇宙論最大の謎の1つ「ダークエネルギー」について、「そもそもそれって誤解で存在しないのでは?」と指摘する論文がこちらで掲載されています。

まず、ダークエネルギーとダークマターを念頭に置いた今の宇宙モデルは「Λ-CDM(ラムダ コールドダークマター)モデル」と呼ばれています。過去記事を貼っておきます。

既存宇宙論の特長は、宇宙をどの方向を見ても同じだよ、と仮定している点にあります。しかし、実際の宇宙は、銀河、銀河団、空洞(void)などの構造があり、これらの不均一性が無視できない可能性があります。

そこに着目したのが、今回提唱した「時空モデル(Timescape cosmology)」です。

この時空モデルの特徴は、「バックリアクション」という概念です。これは、宇宙の不均一性が宇宙の膨張速度やエネルギー分布にフィードバックを与えていると仮定します。

つまり、宇宙を「密な領域(例えば銀河団)」と「空洞(void)」に分け、これらの領域が互いにどのように影響し合うかをコンピュータでシミュレーションしました。

そこでは、「暗黒エネルギー」を仮定せず(ダークマターは仮定)、重力エネルギーや運動エネルギー(従来の科学理論枠内)の分布を試算し、観測データと比較します。

結果だけを書くと、赤方偏移(遠ざかる度合いを測る尺度)が低いまたは高い領域で、Ia型超新星と宇宙背景放射(CMB)という事実として観測されたデータを、既存モデルよりもうまく説明できることが分かりました。

時空モデルは、ニュージーランドの物理学者 デイビッド・ウィルトシャー(David L. Wiltshire) が2007年に提唱しました。その論文ではCMBデータを既存モデルよりうまく説明できることを示しました。

今回もウィルトシャー氏たちの研究です。前回との差分は、Ia型超新星に関する最大の観測データ(パンテオン+)を検証に用いた点で、既存モデルよりさらに精緻であることが示された形になります。

20世紀末に膨張速度が速くなったことが観測(というか解釈)され、その出所が不明なダークエネルギーを仮定しなくてよいのがこのモデルの最大の魅力です。

今後、下記の活動を通じてこのモデルの確からしさが検証されていくことになります。

  • 宇宙の初期条件や構造形成への適用: ダークマターやバリオン音響振動(BAO)のデータを用いたさらなる検証。

  • 観測精度の向上: 新しいデータセット(例:DESやVera Rubin Observatory)による時空モデルの検証。

  • 他モデルとの統合: 時空モデルとΛCDMモデルの融合や他の宇宙論モデルとの比較研究。

宇宙をまるっと丸めずに不均一に分割して計算するがゆえに数学的(または計算論的)には結構な負担になりますが、そのあたりはコンピュータ性能とAIの援用で研究が進むかもしれませんね。

ぜひ、時空モデル(この和訳で普及するかはわかりませんが)に注目しましょう。

いいなと思ったら応援しよう!