H3ロケット年度内打ち上げへ
以前に国策ロケット「イプシロン」の6度目打ち上げ失敗の速報をお伝えしました。
数週間後にJAXAは原因分析の説明会を開き、下図の2段モータで空気を調整する弁にあたる部品が不良で制御不能をもたらした可能性に言及しました。
当たり付けをした不良部品はH3ロケットでも同じメーカーだったのでやや不安でしたが、冒頭記事を読む限り、今のところH3ロケットの準備は順調なようです。(タイトル画像Credit:JAXA)
発注メーカーが同じだけでなく、イプシロンの第一段モーターはH3とも部分的に共通化しており、互いのシナジーを活かすのが元々の設計思想です。(歴史的にはイプシロンがH2の良いところを取り入れて、固体ロケットエンジンとしてのコンパクト化を追求したモデル)
現時点では、最終リハーサルにあたる1段実機型タンクステージ燃焼試験(通常CFT:Captive Firing Test)が終わったところです。
今さらですが、来年初の打ち上げ成功に先立って、H3の基礎情報と特徴について触れておこうと思います。
国策ロケットで文字通り基幹ロケットです。全長約63m、直径約5.2mの大きさです。
実はほぼSpaceXの主流ロケット「ファルコン9」と同じ大きさです。(勿論それに意味はないです)
他にも3段型であることと、液体酸素を燃料に使う点も似ています。
ちなみに、H3のHは水素(Hydrogen)からとっており、液体水素と液体酸素の混合燃料を使用しています。
気になる打ち上げコストについてもせっかくなので比較してみます。
上記公式サイト内に、「50億円」を目指しているとの表記がありますね。
一方ファルコン9も価格をこちらで公表しており、67M USドルです。
1ドル=142円と仮定すると95億円なので、単体比較としてはリーゾナブルと言えるかもしれません。
ただ、一番の違いはファルコン9は1段ブースターを再利用可能にしていることです。必ずしも再利用が絶対的に安いとは断言できませんが、過去にイーロンマスクが1段ブースターが全体フライトコストの70%を占めているとの発言もありました。
仮に事実だとすると、ある程度のコスト削減効果は期待出来そうです。
ファルコン9は既に量産に入り、現時点で180回以上の打ち上げ実績があるため比較するのはちょっと無理があると思います。
もう少し歴史を俯瞰すると、最後の政府主導の有人宇宙船となった「スペースシャトル」。こちらのサイトで費用を公表しており、1つのミッションあたり450Mドルです。
その時代を考えたら、政府も民間も文字通り桁が1つ違うコストで打ち上げが実現できる時代に突入しているわけです。
まずは数か月後に迫ったH3の初打ち上げまで、何事もないことを心より願っています。
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