見出し画像

気象学史4:宇宙の力で天気予報の実用化へ

前回の続きで、気象学の歴史です。

前回は、コンピュータで数十年先を予測する「気候モデル」の発明について、真鍋氏の業績を中心に紹介しました。

今回は改めて直近の天気を予報する技術革新について触れます。

コンピュータの進化は言わずもがなですが、その元データと計算方法でもカイゼンは続きます。

まず元データですが、従来は地上からの観測でしたが、今では「気象衛星」が中心になっています。

人工衛星の打ち上げは、コンピュータが世に出て10年後にあたる1957年にソ連のスプートニクが初となります。日本では1970年に初の人工衛星「おおすみ」が打ち上げられました。過去の関連投稿を載せておきます。

余談ですが、地上を観測する最新型衛星の初画像が、本投稿の直前に一般公開されました。日本の基幹ロケットH3で打ち上げられた「だいち4号」です。

気象衛星については、世界では1960年に米国の「タイロス1号」、日本では1977年の「ひまわり」が史上初となります。

人工衛星は、地球と違う動きで常に別の場所を見るタイプと、地球と同じ動きをとることで同じ場所を観測する(静止衛星)2タイプがあります。

ひまわりは後者で、常に地球の同じ方向をむいていることから、当時の宇宙組織(NASDA、JAXAの前身)責任者の意向で命名されました。そう聞くと愛着がわきますね。

世代交代が続き、今でも「ひまわり9号」が2022年から活動中です。いずれにしても、気象衛星は日本の宇宙計画の枠組みとも密接に絡んでいます。

次にシミュレーション方法ですが、基本は以前の回でふれた「流体力学の法則(ナビエ・ストークス方程式)」です。

ただ、コンピュータに読み込ませるには観測データを格子状にぶつ切り(デジタル化)にする必要があり、大体その幅は数km〰数十kmの単位です。

日本の気象庁では、状況に応じてその格子感覚含めたモデルを複合的に組み合わせています。公式サイトからそのイメージ図を紹介します。

出所:気象庁サイト(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/whitep/1-3-4.html)

上記サイト先の表を見る限り、生活で必要な時間単位での天気予報でも格子間隔が5kmとなっています。我々が日常見ている雲は、明らかにそれよりも小さいスケールで動いているので、なんとなく天気予報としては実用性は厳しい感覚を持ちます。

この課題は、以前に紹介したこの分野パイオニアであるルイス・フライ・リチャードソンも認識しており、サブグリッドという技法で解決しようとしています。

ざっくりいえば、グリッド(格子のこと)の中を別のルールでシミュレーションする方法です。
例えば、ある格子内の気温と気圧が一定の条件を超えたらそこは雨が降る確率を30%にする、というイメージです。

ここは結構テクニカルな領域のようで、今でも色んなアプローチをしているようです。

コンピュータシミュレーションが、計算機と宇宙技術の進化で成長を支えあい、それでも拾えない細かい領域を人間の知恵も織り交ぜて補完している、という感じでしょうか。

次回は、より最新の天気予報技術動向について触れてみたいと思います。


<参考リソース>


いいなと思ったら応援しよう!