多世界解釈の再考:量子力学とエネルギー保存則の新たな視点
この数年「量子」への注目が、基礎科学以外の分野にも広がっていると感じます。産業だと「量子コンピュータ」がホットですね。
ただ、量子力学の概念としての解釈はまだ統一されておらず、その中でも根強い人気(?)を誇るのが「多世界解釈」といわれるものです。
上記で触れた、量子コンピュータにおけるGoogleの技術革新の結果としてこれを支持する一幕も垣間見えました。詳細は過去投稿にて。
多世界解釈とは、
量子状態を観測すると収縮するわけではなく、世界が分岐しているだけだ、
というなんとも初見の方にはトンデモ説に聞こえる主張です。
ただ、一応その仮説を受け入れると収縮という謎を回避できるので、上記の関係者含めて支持者はいます。
個人的には、これを受け入れた先に科学の発展があるのかな?という懸案があるのであまり関心を持っていませんでした。(面白い仮説であることは認めます)
その多世界解釈にも1つ論点があり、エネルギー保存則に関するものです。
こちらも一言でいえば、1つ1つの現象ではエネルギー保存則は壊れるかもしれないが、世界(観測して分岐する事象)全体では壊れない、という主張です。これも多世界解釈サポートの一つの要因です。
この論点について、新しい仮説が提唱されました。日本語メディアで分かりやすく紹介されています。
ようは、
観測機器も含めた量子現象を解釈すると、各事象でもエネルギー保存則は崩れず、ひいては多世界解釈自体が不要かもしれない、
というはなしです。
元論文はこちら。
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2220810120
量子コンピュータが速いのは、並列的な処理が出来るからで、その原理は「重ね合わせの原理」によるものです。
上記論文では、この重ね合わせの作用を考慮する際に、観測者と対象となる素粒子(電子・陽子など)を媒介する観測機器も考慮する、というのがミソです。
生憎その詳細な方法までは追ってませんが、初期の準備段階と時間軸も含めてその保存則を計算するとうまくいくようです。つまり、準備と時間軸を足し合わせると、たとえ個々の実験結果(1つの世界)であっても保存されます。
多世界解釈は、基礎的な概念の解釈において論点になり、おそらくはこの論文は正しいとしても、量子コンピュータなど実用面では影響はないと思います。(間違ってたらすみません)
ただ、自然の真理を追い求める自然科学者であれば、この説は重要な論点だと思います。
もし今後もこの流れで大きな進捗があればこちらでも共有していきたいと思います。