ヒトゲノムのパーフェクト達成
我々人類含む地球上の生物は、遺伝子(ゲノム)から構成され子孫に引き継がれます。
そのヒトゲノムを完全解読に成功した、というニュースが流れました。
ヒトゲノムとは、ヒトのゲノムの全塩基配列を解析するプロジェクトで、2003年に完了したとされていましたが、厳密には8%残していたそうです。
今回、老化すると短くなる「テロメア」と呼ばれる部分などを解読する新たな手法を開発し、それを今回カバーしたということです。
これからそこから読み解かれる100種類弱のたんぱく質もあるようで、今後もその続報を待ちたいです。
ただ、2003年に完了した初期での結果については、その意味合いについてはあまり知られてないかもしれません。
元々ヒトゲノム計画は1990年代にアメリカ政府が公式なプロジェクトしてはじめたが、他にも民間企業が参戦してきました。
その代表格がセレラ・ジェノミクス社で、特にそれを引っ張ってきたクレイグ・ヴェンターという分子生物学者の存在が大きいです。
彼は、ショットガン・シークエンシング法という配列決定法を編み出して、一気に政府の研究を追い越しました。名前がすごいですが、文字通りショットガンのごとく配列を断片化してそれをスーパーコンピューターで並列に読み解いて元の塩基配列を推測する、という方式です。
ただ、問題だったのはその解析結果を特許にしようとしていたことで、政府との交渉の結果、解放するという結論に落ち着きました。
ヒトゲノム計画は、元々の予定より前倒しして完了したのですが、彼によるところが大きいです。民による官の押し上げはよくありますね。
さて、その結果は予想外のものでした。発表当時と、他の生物との比較表を引用します。
何となく高等生物ほど、遺伝子の数が多いとおもわれてましたが、結果はあまり関係ないことが明らかになりました。
今では、もう少し少ない(22000ぐらい)数が推定されています。
遺伝子の数が特殊でないとすると何が我々を知的生命たらしめたのか?
確認になりますが、人類含めて我々の生命活動を担う「タンパク質」は、DNA→RNA→アミノ酸→ペプチド化→タンパク質
という流れで形成されます。
ただし、DNAの配列が同一であっても、DNAへの化学的な修飾を通して細胞や個人の形質を変化させる後天的な仕組みがあることが分かってきました。
それは、「エピジェネティクス」と呼ばれ、今でもホットな研究分野です。
コンピュータに例えるなら、DNAからタンパク質への仕組みがハードウェアで、その枠内で動的に指示するソフトウェアプログラムがエピジェネティクスという関係です。
つまり、ヒトゲノム計画を受けて、新しい生命科学の分野への門戸がさらに開いたともいえます。
そして既にこれは基礎研究テーマだけでなく、産業の分野としても期待されています。
今回のヒトゲノムの完全化が、どこまでのインパクトか分かりませんが、まだまだ生命の神秘はベールを脱いでくれてはいないかもしれませんね。