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レトロな浪漫をくすぐる次世代望遠鏡
あのNASAがゲームを開発しました。下記サイト上部の「Play」ボタンよりだれでも無料で楽しめます。
念のためですが、間違いなく「あの」NASAが開発したものです。(フェイクでもないです)
ゲーム初期を彷彿とさせるビット感あふれる超レトロな仕上がりで、初め見た時に「???」が頭の中を旋回しました。
よくよく上記サイトの本文を読めば分かりますが、これは次世代望遠鏡「ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡」(以下ローマンと略称)のプロモーションの一環で作られたゲームです。
あの有名なハッブル望遠鏡と同じ波長(赤外線領域)で200倍以上の解像度を誇る性能で、まだ打ち上げ時期は決まってませんが、下記サイトによるともう設計レビューは完了し、2027年には宇宙での探査を始めるとのことです。
ローマン望遠鏡は、昨年末に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡同様、太陽系外まで移動して宇宙の構造や様々な謎を解明します。
特に注目されているのは、95%以上のエネルギーを占めるダークマター(暗黒物質)とダークエネルギーの探索です。
ダークマターは過去にも取り上げたので基本的な内容は割愛します。
その2倍以上のエネルギー分布を誇る「ダークエネルギー」ですが、20世紀末に提唱された比較的新しい説です。
名前の由来は「ダークマター」にあやかってます。どうも謎なものは「ダーク」と呼ぶ傾向が宇宙物理ではあります。(暗黒時代という言葉も)
話はアインシュタインにさかのぼります。自身で打ちたてた一般相対性理論を定式化する際に、重力は時空の歪曲だけだと宇宙が動的になって気持ちが悪いので、「宇宙項」と呼ばれる定数を追加しました。
ところが、ハッブルの観測で宇宙は膨張していることが分かり、アインシュタインは宇宙項を撤回しました。(本人が「生涯最大の失敗」とこぼしたという都市伝説も。)
アインシュタイン死後に、1970年代にインフレーション理論の登場(宇宙創成にはビッグバン以前に膨大なエネルギーが必要)と、宇宙膨張速度がハッブルの測定よりも加速していることが1990年代に分かり、(アインシュタインの死後)宇宙項が復活しました。
数学的にはそうなのですが、物理的な意味合いが「ダークエネルギー」と呼ばれる斥力というわけです。
宇宙理論で最も代表的なエピソードの1つです。
もっと言えば、再補正後のアインシュタイン(重力)方程式も、あくまで我々の宇宙近傍でしか検証されていません。
今回のローマン望遠鏡に期待されているのは、太陽系より遠いエリアで宇宙が加速する状況をより精緻に観測することで、重力方程式の修正を迫るものです。
ローマンの理論上での性能を使ったコンピュータシミュレーション動画がNASAが公開しているので紹介しておきます。
宇宙が拡大(過去)するにつれて、各立方体内の銀河の密度は、左上の50万個以上から、右下の約80個に減少する様子がうかがえます。
最後に、ローマン望遠鏡の名称由来ですが、いわずもがな人名です。
実は多大な貢献をしたハッブル望遠鏡の実現に最大限貢献した科学者の名前で、この方は「ハッブルの母」と呼ばれていました。
当初は別の名前(WFIRST)だったのですが、2020年にNASAが改名を発表しました。2018年に死去したことも関係したかもしれません。
まだ先ですが、それまでは童心に帰って今回のレトロなゲームを楽しんで、打ち上げの日を首を長くして待ちたいと思います。
※タイトル画像Credit:NASAのゴダードスペースフライトセンター
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2021/nasa-confirms-roman-missions-flight-design-in-milestone-review