Starlinkは青い鳥ではない
今は、イーロンマスクという名前を出すと青い鳥のTwitter買収で話題は持ちきりです。
以前にも、Twitter買収交渉中にマスク氏の事業遍歴を取り上げたことがあります。
既にマスク氏は完全買収をおえ既存取締役も退任したので、ルール上は彼の意思が反映しやすくなっています。
ただ、数億名が使うプラットフォームなのと彼自身のキャラクターが目立つため、膨大なガヤという波が押し寄せてくるため、評判リスクで他の事業に影響がどう出るかが気になります。
特に個人的に一番その趨勢を気にしているのが宇宙事業SpaceXです。
まだ非上場ですが、今年だと国際紛争地帯に緊急でネット環境を提供すべく通信衛星Starlinkサービスを該当地で始め、最近日本もサービスインして注目が高まっています。(タイトル画像Credit:SpaceX)
今回は、このStarlinkの可能性についてサイエンスの切り口で触れてみたいと思います。
あらためて基本からですが、Starlinkは地上でインターネット環境を提供する通信衛星で、投稿時点で既に3500機超が打ち上げられています。
将来的には2034年までに42,000機を打ち上げる予定だそうです。
上記サイトでも報道されているとおり、個人向けから提供開始してますが、既に公式サイトでも法人向けサービスとして、「航空機・船舶・自動車」などがあります。
特に自動車となると同氏が手掛けるTeslaとの連携が気になります。
表面的にはまだネット環境が整っていない地域の方々へサービス提供するのでしょうが、このあたりは地上や空中(飛行機・ドローン)などでも競合はひしめき合っています。
そんななかで、個人的に可能性を感じているのが、最新のStarlinkにはレーダーが搭載されていることです。
非上場なので内部で行っている活動は見えにくいのですが、マスク氏自身もある程度認めているようです。
せっかくなので、ファルコン9に積まれている写真(赤丸がレーダー関連部品とのこと)も上記より引用しておきます。
で、レーダーが追加搭載されて何がすごいかというと、通信衛星同士がこれを通じて直接宇宙空間で通信することが可能になります。
もっと言うと、衛星通信サービスとは地上局アンテナが必須ですが、それがある程度不要になります。
これは地上局設備費用軽減という効果も大きいですが、もう1つ、長距離であれば地上以上に高速な通信環境が出来る可能性があります。
個人用途だと数百Mbps以上であれば十分という方もいるかもしれませんが、速さ自体が利益に直結する商売もあります。
それは高頻度取引、一般的にHFT(High Frequency Trading)と呼ばれる金融サービスの世界です。
AIによるアルゴリズム取引が進んでいるのはご存じの方も多いかもしれません。もう1つコンピュータ取引で既に利用が進むのがHFTで、コンピュータが各市場のほんのわずかな価格差を見つけて大量に売買することで鞘を抜く取引だと思ってください。
Starlinkによる光衛星通信を使うと、宇宙空間(ほぼ真空)を経由するだけ、地上ケーブル(例えば海底の光ファイバ)よりも損失が少なく高速化が期待できます。
まだ現時点では参入表明はしてませんが、今後数万機体制になってくると現実性を帯びてくると思います。
もう1つがGNSS(Global Navigation Satellite System)サービス提供です。
GPSと言った方が伝わりやすいかもしれませんが、厳密にはGPSは米国政府が民間に開放したもので、日本含めて主要国が独自のGNSS衛星を開発・提供開始中です。以前に日本版について投稿したので引用します。
GNSSとして使うには、(期待値次第ですが)高い技術が必要になります。
つい最近、その可能性を科学者が独自に調査してどうもいけそうとのニュースが最近流れています。
既に国家が提供を始めつつある中でどこまで商業的に化けるかは現時点ではわかりません。
また、マスク氏のことですので、まだ隠れた仕込みをしているかもしれないので、公表されている情報を基に今後も夢想していきたいと思います。