輝きを増す日本の光量子技術
量子技術は、日本政府としても注視している次世代技術です。
この領域で、横国が素晴らしい研究成果を発表しました。
ようは、
ダイヤモンド内で光を使った量子スピンのコントロールに成功し、今後の量子メモリなどへの応用が期待される、
という話です。
前提が割愛されていて分かりにくいと思いますので、そもそも量子技術のすごさと難しさから触れておきます。
量子が期待されているのは、今の主流のデジタルコンピュータが逐次処理(2進数で0か1を選び、次にまた選ぶ・・・の繰り返し)に対して、同時に情報を重ね合わせて保持することができることです。(それが量子の世界の不思議な常識です)
例えば、5回の逐次計算が重ね合わせることができると仮定すると、
デジタルコンピュータだと、2の5乗で32回の計算が量子コンピュータだと1回で済むわけです。
ただ、この量子の0か1を表現する量子ビットの制御が超ミクロな世界を操作するため極めて難易度が高いというわけです。
その制御方法によっていくつかの派閥があります。
元々はGoogleやIBMが研究を先行し、超伝導回路を使った方式が主流でした。他にも、イオンや半導体があり、そして「光」を使った方式は日本の研究グループが力を入れています。(なお、一部のアルゴリズムに特化したイジング方式は、この文脈では量子コンピュータの定義に入れていません)
参考までに、この研究で注目されている方の若手研究者の光量子技術に関するインタビューと量子コンピュータの基本に関する著作を載せておきます。
先ほど、情報を重ね合わせると丸めて書きましたが、それを復号するときのエラー処理が結構大変で、そのあたりも上記書籍で研究現場に根差したリアルが書かれています。
さて、話を冒頭の研究発表に戻します。
こういった流れで書くと、冒頭の発表も光量子ビット制御と思うかもしれませんが、今回は異なります。
ダイヤモンド分子内で量子制御に使える電子の準備に光を使った、ということです。一応冒頭記事から絵解き図を引用しておきます
この研究の意義は、電子間の幅が小さくても量子制御できる可能性を見出した、もっといえば量子技術として使えるキャパシティが高まります。
先ほど重ね合わせをした後に我々が理解する復号処理が大変、という話をしましたが、量子計算自体は複製ができません。
ということで、我々のPCでいうところのメモリやストレージ用途にも工夫がいり、今回の研究成果はそういったところにとても可能性を感じます。
今回の量子制御自体は、従来の電磁波を使ったコントロールとのことです。
ここを、他の日本の光量子制御研究グループと共同研究で、すべて光の技術で揃えられないかなぁと相当無邪気な感想を持ちました。
既に量子技術(量子情報科学)は、最近方針が発表された経済安保推進法にもノミネートされています。
分かりやすい例では、暗号などセキュリティにも関係するため、国家研究として、レーザのように同じ方向を進む選択肢もあると思います。
いずれにしても、今回の研究は光明が差したどころではなく、量子技術の視界を広げる可能性を秘めていると思います。