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ブレークスルー賞2024物理分野の補足

前回紹介したブレークスルー賞全体の補足です。

基礎物理学賞は「場の量子論」への貢献、と相当端折って書いたので、もう少し補足しておきます。

場の量子論の意味合いをもう少し書いて、今回受賞した二人それぞれの貢献内容で書きます。共通テーマとはいえその業績および適用された分野は異なります。
なお、前置きしておくと、公式サイトではテーマ以上に具体的な貢献内容は公開されていません。
ですので、あくまで下記の貢献内容は、公開情報から得た推測です。

0.場の量子論とは?
前回投稿でも使った主要な物理理論の系統図を再掲します。

冒頭記事内の図

量子力学と場の古典論が合体したイメージですが、その元となる理論を簡潔に書いておきます。

量子力学:
原子以下のミクロサイズでのみ適用される運動理論。例えば電子の位置や運動量は決定論的には事前に分からない、という例は有名。(ここまでミクロだと測るという行為自体も物理作用として組み込む必要がありそうです)

派生的に注目されて、2022年ノーベル物理学賞にも輝いたのが「量子もつれ」という現象です。過去投稿したので引用しておきます。

場の古典論:
名前の通り「場」という概念が中心に来ます。同じ言葉を含む「電磁場」を類推するとよいかもしれません。

物質の動きを見るのでなく、それが活動する場を中心に置く理論です。

場の古典論にも、特殊相対性理論を含めない(非相対論的)ケースもありますが、今回の文脈では含めています。(相対論的場の古典論)
そこでは、有名な「光速度不変の原理」を導入しています。
そしてもう1つ重要な要素が「作用原理」と呼ばれるものです。
ざっくりいうと、ある物理法則にしたがった値が最小の経路をとる、という意味合いです。

これらの必要条件を、先ほど触れた量子力学のルールにまで拡張されたものが「場の量子論」です。(相当バッサリしました☺)

という共通テーマを踏まえて、二人の各論を取り上げます。

1.アレクサンダー・ザモロチコフ
「場の量子論」に対して、二次元という条件でエネルギーと結合定数(各素粒子が結合する強さの度合い)を含む正の実関数(C関数)を見出しました。それを踏まえたC定理も登場しています。

これによって、より場の量子論の基礎的な研究が進むことになります。

2.ジョン・カーディ

1の二次元をさらに高次元に広げた功績もありますが、カーディーはブラックホールの研究に貢献しています。

唐突感がありますが、ある変換に対して作用が不変な場の理論を応用したカーディの公式をつくり、これによってブラックホールのエントロピーを計算することが可能になりました。

それによって、ブラックホールの研究が進み、(相当過程は端折りますが)注目されている「ホログラフィー原理」への道筋がついていくわけです。関連する過去投稿を1つだけ引用しておきます。

なかなか難解な場の量子論ですが、まさかのブラックホールがらみもあり、興味のある分野から逆算して学ぶともう少し理解が進むかもしれないと感じた今日のこの頃です。

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