氷球(スノーボール)時代に多細胞生物がサイズアップ
生命の歴史では、いくつか飛躍的なシーンがあります。
例えば、核を持つ「真核生物」の誕生は、ミトコンドリアの共生というアクロバティックな方法で進化を遂げたと考えられています。
過去の関連投稿を載せておきます。
記事内に書いたとおり、共生のきっかけは「酸素濃度の急増」(光合成生物の誕生)というピンチ、でした。ある意味それによって進化圧が高まったとも見れます。
次の飛躍は「多細胞生物」の誕生です。もちろん酸素増加によって細胞が複雑化したことも関係していると思いますが、大酸化時代から10億年という時間が必要だったのが1つの謎です。
かつ、一気に生物のサイズと種類も増加したため、どうも酸素増加だけでは説明がつかないようです。
ところで、多細胞が誕生した時期は「スノーボールアース(地球の表面が凍った状態)」かその直後のことでした。
(時期が重なるため)因果関係があるのでは?
という説は昔からありました。補足的に過去記事を載せておきます。
その因果関係を説明する仮説が最近発表されていたので紹介します。
<元論文>
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2023.2767
まず、それぞれの時期を記事内より抜粋しておきます。
多細胞生物の誕生時期:新原生代(10億~5億4100万年前)
史上最大のスノーボール発生時期:クライオジェニアン期(7億2000万~6億3500万年前)
スノーボールアース時代に海が凍り、太陽光が遮られ、光合成が減少し、その結果、海の栄養分が枯渇していきます。
常識的に考えると、そこで生きる生物は、冬眠のようにエネルギーを節約してむしろサイズ・種類は小さくなるのでは?と思ってしまいます。
ところが、より多くの水を処理できるより大きな生物がいれば、生き残るために十分な量を食べる可能性が高かった。そして後年になって氷河が溶けると、これらの大型生物はさらに拡大する可能性があり、生物爆発(エディアカラ→カンブリア)につながったという説です。
余談ですが、カンブリア爆発の直前のエディアカラ期から生物巨大化の兆候はありました。詳細は関連記事で。
元論文によれば、下記の(b)のような捕食型生物が巨大化したと設定しています。
現時点では、まだこのような生物の化石は見つかっていませんが、これが発見されるとまた生命の歴史に新しい1ページが追加されますね。