MIT Tech Reviewが選ぶ10大テクノロジー2023年度版(前半)
毎年MIT Tech Review誌が10大テクノロジーを発表しています。
先日その2023年度版が公開されたので、今回はそれをややかみ砕いて紹介します。(タイトル画像は下記記事内より引用)
紙面に即して1から順番に解説し、今回は初めの5つに絞ります。
1.高コレステロールのCRISPR治療
CRIPRはもはや普及期に移り、過去に下記記事でも触れた通り、その残課題を改善する応用版も出始めています。
普通にうけとめると、なぜ今さら?と思う選出ですが、高コレストロールという比較的日常的に近いシーンにも安全に適用できる、というところがポイントです。
実は上記記事でもふれたCRISPRの改善として、まだ想定外のリスクがあるCas9という酵素を使わずに、塩基(既にCRISPR2.0 という言葉も登場)編集、そしてプライム編集(こちらはCRISPR3.0 )を使っているのがポイントです。
要は、CRISPRの進化版がより日常の治療役に広まりつつある、ということです。
2.画像生成AI
もうこれは解説すら不要な気がしますが、2022年から話題に事欠かない「Dall-E2」「Stable Diffusion」を指します。(勿論他にもありますが)
さらに、前者を開発したOpenAIがその後にリリースした「ChatGPT」は、2022年11月にリリースされてわずか2か月でユーザ1億人を突破する勢いです。つまり、画像に限らず生成系AIが使いやすくなったことで、革命に近いことが起こりつつあるといっても大げさではないと思います。
個のインパクトは、単体での使用だけでなく、従来の研究と組み合わせることでもブレークスルーを起こしつつあります。
分かりやすい例として、先日触れた。Stable Diffusionと神経科学の研究成果を引用しておきます。
3.RISC-V
これはコンピュータ関係者でないとなかなか耳にしない言葉かもしれません。
超ざっくりいうと、コンピュータチップ(CPUなどコンピュータのコアとなる演算部)に対するオープンな標準仕様です。
元記事でも例示されてますが、Bluetoothは分かりやすい例です。音声を発するデバイス種類に寄らず、この企画であれば汎用的に音声を連携することができますね。
このRISC-Vが今後普及することによって、同じようによりチップ製造と相互連携がしやすくなりますので、既存の勢力構造に影響を与える可能性があると思います。
まだ2022年に設立されたのと、当然既存勢力からの抵抗もある程度予想されますので(例えばチップ設計のarmとか)、一気に何かが変わるかは様子を見る必要がありますが、いずれにせよチップ自体も汎用化する記念碑的な出来事であることは間違いありません。
4.量産型軍事ドローン
昨今の国際紛争でドローンの負の側面が目立っています。
元々は、米国軍事機関によるものが注目されてきましたが、近年での紛争では、それ以外の国(中国・イラン・トルコなど)で開発されたモデルが(報道では)目立ちます。
DJIなど市販している大手ドローンメーカーはそういった用途には批判的に臨んでいます。
言い方をかえると、それだけ汎用化・普及化したがゆえに、開発・生産のハードルが下がったとも言えます。
これは技術的ブレークスルーというよりは、それがもたらす負の側面を意識する、という観点でノミネートされたのかなと思いました。(勿論汎用化といいましたが、その自律的性能が相当向上したのは事実です)
5.遠隔医療で中絶経口薬
今回の中で一番分かりにくいタイトルだと思います。
2022年に米国最高裁判所が一部の州で中絶を禁止する、という衝撃的なニュースを覚えている方はいるかもしれません。
実は、この判決が出る数年前から、中絶効果のある錠剤がFDA(ようは米国当局)によって許可され、かつパンデミック時にそれを郵送することも一時的に許可されていました。
その流れでの最高裁判決があったため、中絶への関心・需要が急増して、NPO支援のもとで遠隔医療による処方&錠剤輸送が社会的な現象になっている、ということです。
投稿時点で中絶を禁止している州は13つあり、かつ遠隔医療を禁じている州もあります。これら州法も踏まえて上記団体が中絶を望む方々を支援している、というのが今回の選出のポイントになります。
次回は後半の5つをご紹介しますが、ぜひ興味を持った方は冒頭記事とそのリンクから深堀探索できますのでアクセスしてみてください。