壁だけでなく生地にも耳がある日が来る!?
Nature誌から、なかなか想像を膨らませてくれる記事が出ています。
要は、
人の耳と同じ原理を使った布地の開発に成功し、今後保安や医療などに応用が期待されている、
という話です。
耳は結構巧妙にできた精密な機械です。
大きくは、鼓膜を挟んで外と内側に分かれます。この鼓膜がまさにセンサとして音の揺れを感知し増幅して内側に送ります。
そしてその振動を電気信号に変えて脳に送るのが、内側にある蝸牛(かぎゅう)と呼ばれる器官です。
名前の通り、かたつむり🐌そっくりな渦巻き型の形状です。
下記サイトで蝸牛のメカニズムが詳細に載っていますが、まぁ知れば知るほど人体の不思議が増してきます。
ざっくりいうと、音が器官の膜によって周波数成分に分解されて、有毛細胞にあたえる刺激でチャネルを開閉して電気を帯びた分子が移動する、という仕掛けのようです。
冒頭の研究は、生地内にこの音波を電気信号に変換する「圧電繊維」を布地の糸に織り込んだものです。
感度は人の声レベルでも検出できるのと、洗濯機で洗えるとのことで、価格さえ見合えば結構ライフスタイルに応用できそうです。
記事内での応用例は下記3つが紹介されています。
拍手のする方向を検出
着用した同士でのコミュニケーション円滑化
肌に装着して心臓モニタリング
いずれにせよ、方向性としては「人の聴覚支援」「人と切り離した用途」に大別されると思います。
聴覚支援としては、日本は一番可能性を秘めているかもしれません。
というのも、日本は世界で最も「超高齢化社会」で、かつ難聴者数に対して補聴器利用率が低い国だからです。
おそらく前者は説明するまでもありませんが、既に3割が65歳以上で、2位のイタリアを大きく引き離しています。
高齢化で耳が遠くなるのもある程度想像できると思いますが、それを助ける補聴器装着率が、これまた圧倒的に低いです。例えば下記を引用しておきます。
技能者不足も大きいですが、「煩わしさ」を感じる方も多いとのことです。
あと、私の周辺では、心理的な抵抗があるという声も聴きます。補聴器を付けた姿を見られると、何か障害があるかのように思われてしまう不安があるそうです。
最後のは小型化である程度解消できそうですが(余談ですが、インドでカンニングのため耳に装置を埋め込んだニュースを聞いたことがあります)、「わずらわしさ」は今回の生地が解決してくれるかもしれませんね。
ちなみに私は後者の「人と切り離した用途」に可能性を感じます。
電気信号は脳だけでなく、「デジタルコンピュータ処理」がしやすくなります。
今のセンサでは「充電」が必要で、それを今無線化しようという動きは進みつつあります。
ただ、それでも無線でエネルギーを供給する設備は必要です。
もし今回開発された繊維の物理的な耐久性が高いのであれば、センサの代替品として、上記例の保安・医療に限らない無限の可能性を秘めていると感じました。
人に限らず、生物の仕組みを機械に応用するというアイデアは探せばもっとありそうで、今後も意識して調べてみたいと思います。