深海の『暗黒酸素』の発見が生命の歴史を変える!?
宇宙の研究には、よくわからないものを「ダーク(暗黒)」と形容する癖があります。
その代表格が「ダークマター(暗黒物質)」で、過去にも何度か取り上げました。(あとは全宇宙に存在する謎の斥力「暗黒エネルギー」や、宇宙初期の「暗黒時代」とか)
実は宇宙分野以外でも転用され、生命科学の分野でも「遺伝子のダークマター」と呼ばれるものがあります。
ようは、生命活動に必須のタンパク質にコード化される以外の、何の意味があるのか不明な領域のことを指します。
別名「ジャンクDNA」とも呼ばれてましたが、今はジャンクではない(遺伝子発現に影響を与える)ことが分かってきています。こちらも過去投稿に留めておきます。
そして今回、あらたな研究分野で「暗黒」の異名を持つ言葉が生まれました。
その名も「暗黒酸素」です。こちらの記事です。
ようは、
深海に酸素を放出する謎の金属塊を発見した、
というはなしです。
地球生命の歴史において「酸素濃度の上昇」は大きな転換期でした。
それによって、酸素をエネルギー源とする生物が優位になる革命がおこり、徐々に複雑な生物に進化していきます。過去の関連投稿を。
従来説では「酸素」は光合成をおこなう生物(シアノバクテリア)によって生じたと考えられていました。
ところが、生物がいない深海で酸素を放出する金属塊を発見した、これは生命の歴史の定説が覆される可能性を秘めています。
金属塊の画像を元記事から引用しておきます。
大きさは大体ジャガイモぐらいです。成分は鉄とマンガンの酸化物の塊で、コバルトや希土類元素などの貴金属も含んでいます。
当初は酸素を検知するセンサーの異常と思っていたそうです。それだけ常識外だったということですね。
今回のような金属塊の集団は、海面下1万~2万フィート(3,000~6,000メートル)の海底の平坦な場所で今までも観察されていました。
ということは、今回が奇遇だったわけではない可能性が高いわけです。
もし光合成をおこなう生物が必要でなくなったとしたら、酸素を必要とする生物(例えば今のミトコンドリアの先祖)の誕生・進化する場所がより拓けてきます。
つまり生命のエネルギー革命ともいえるビッグイベントの史実が大きく変わるかもしれません。
余談ですが、この生物のエネルギー革命を変える深海の金属塊は、現代のエネルギー革命でも注目されています。
何かといえば、ガソリン自動車からEVへのシフトで需要が高まるレアメタル候補です。1つ紹介記事を載せておきますので関心のあるかたどうぞ。
皮肉にも、古代と現代両方のエネルギー革命に関わることになってしまった「暗黒酸素」。
元祖暗黒物質とは異なり実際に採掘ができるため、これからそれぞれの目的で争奪戦が起こりそうです。
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