今見直されているもう1つの進化論
「進化論」と聞くと、だれもがダーウィンを思い浮かべると思います。1859年に、あの有名な「種の起源」を著しました。
実はそれより以前に、進化論を唱えている研究者がいました。
フランスの博物学者ジャン=バティスト・ラマルク(Jean-Baptiste Lamarck)です。
ラマルクは、種の起源に先立つ半世紀前(1809年)に独自の進化論を提唱しました。彼の理論はダーウィンのものとは異なり、獲得形質の遺伝(生涯で獲得した特性が子孫に引き継がれる)を重視していました。
それに対してダーウィンは、自然選択説(淘汰)を唱えているのは知られている通りです。つまり、生後に努力しても遺伝的性質は継承されない(あくまでハプニングとしての突然変異)というスタンスで、まさに対極です。
ところが、20世紀後半になって、まさにラマルクの唱える遺伝の仕組みのような性質が発見されています。
総称して「エピジェネティクス」と呼ばれ、過去にも何度か取り上げました。
エピジェネティクスは、ラマルクの理論のように、個体の経験や環境の変化が次世代に影響を与えることがあるという考え方に類似しています。
ただし、ラマルクが唱える「獲得形質の遺伝」とは異なります。エピジェネティクスは遺伝子の配列そのものは変わらず、DNAのメチル化やヒストンの修飾といった遺伝子の発現を調整する仕組みが関与しています。
例えば、ラットを使った研究で、母親ラットがストレスを受けた場合、その子供たちの行動やストレス反応に変化が見られたのは有名な実験です。
エピジェネティクスは、ダーウィン的な進化(自然選択と遺伝的変異)を補完する形で、生物が環境に適応する仕組みを説明する新たな視点を提供しています。
これにより、生物の進化において環境や個体の経験がどのような役割を果たすのかを理解するための新しい枠組みが形成されました。このため、ラマルクの「環境が形質に影響を与え、それが次世代に伝わる」という概念が、現代の科学においても一定の関連性を持つものとして再評価されています。
つまり、進化論自体も最新の科学を踏まえて進化(?)しているということですね。このあたりは改めてもう少し深堀してみたいと思います。
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