NASAの歴史5:無人探査計画
日本時間9月4日早朝に、アルテミス計画初号ロケット打ち上げ予定でしたが、残念ながら再度打ち上げ延期となりました。
ロケット燃料として液体酸素を注入する作業中に液体水素の漏れが発生し、修復できなかったため、延期したそうです。
次回こそ、期待したいですね。
さて、今回は前回まで「有人宇宙探査」に偏って触れたので、「無人宇宙探査」の切り口でその歴史に触れてみたいと思います。
※タイトル画像Credit:NASA
有人宇宙計画の目的は、率直に言って「安全保障も含めた国家威信」的な意味合いが強かったのは否めません。
そして、前回も触れたとおり、NASAは一枚岩の組織でなく主要センターが複数あり、ミッションが高度化するにつれてその内部調整も難易度が上がってきます。
その組織一覧は下記の公式サイトに公開されています。(2022/2時点)
その意思決定の難しさが少しは感じられると思います・・・。
初期の無人探査計画は、上記組織図の右下にある「JPL(Jet Propulson Laboratory)」が主導しました。下記でその歴史が時系列で見れます。
歴史的には、1960年代から「月無人探査」が開始され、有人のアポロ計画にも技術的な面で貢献することになります。
次のターゲットは、地球に近い惑星です。参考までに太陽系惑星群の距離一覧を載せておきます。太陽から地球までを1AU(天文単位)と定義します。
そして、月(衛星)の次に近い「金星」「火星」を目指す計画が1960年代から、JPLを中心に始動します。
歴史的に初めて惑星軌道に到達したのは「マリナー計画」と呼ばれ、1号は失敗したものの、2号で金星軌道にのって、それ以降人類はより精密な惑星映像を手にすることになります。
そして遂に惑星着陸の偉業を成し遂げることになります。
これは「バイキング計画(1号・2号)」と呼ばれ、Langley Researchセンター(ラングリー研究センター)が全体計画を担い、JPLは支援側で臨みます。
NASAは、当初無人惑星探査はJPLに任せていましたが、それによるリスクも考慮し、他の主要センターにも同じような計画をさせて競わせていたようです。この辺りもNASAの複雑な管理体制をにおわせます。
この計画でついに1976年に火星への着陸に成功し、人類は初めてその火星に降り立った視点での映像を目にすることになります。当時TVを見ていた方は印象に残っているのではないでしょうか?
次に目指すのは太陽系最大の惑星「木星」です。
ここもどこに任せるかは競争がありましたが、「Ames Research Center(エイムズ研究センター)」が選ばれます。
おそらく一番木製探査で有名なのは、バイキング10号の試みです。
異星人に伝えるために、人類の基礎情報を金属板に刻みました。おそらくこちらを見たことがある人は多いのではないでしょうか?
これはSF作家としても有名な科学者「カール・セーガン」による考案で、当時でも賛否両論はあったそうです。今は・・・どうなんでしょう?
いずれにせよ、バイキング号は無事木星軌道に到達し、その映像から惑星科学にとっての研究は進みます。(今回はその内容までは割愛)
このように1970年代は近傍の惑星到着に湧きましたが、その間、JPLは木製以遠の惑星探査計画を打ち上げます。
1970年代末から80年初頭にかけて、太陽系すべての惑星(当時は冥王星含む)が都合よく一列に並ぶ時期があり(要はエネルギー効率上都合がいい)、JPLはこれを利用して一気に全惑星に到達する野心的な試みをNASA本部に提案します。
ただ、予算制約もあって(当時はアポロ計画が終わり予算緊縮の時期)、まずは木星・土星だけを目指す「ボイジャー計画(1号)」に落ち着きます。
ここでも、お茶の間の話題になるユニークなモノが積まれます。
それは、「地球の音」を搭載した異星人に送ったレコードで、通称「ゴールデンレコード」と呼ばれます。
ちなみに、反対の声もあって、現在は地球からそういった情報を送る行為自体が自主規制されています。
さて、ボイジャー計画ですが、1号が土星軌道、2号では天王星・海王星まで到達し、これで太陽系惑星はほぼ制覇したことになります。(割愛しましたが水星・金星も既に到達)
ちなみにボイジャーはなんと半世紀が経過した現在も運行を続けています。
最近のニュースによると、太陽系外に突入し、距離にして165AU(太陽までの距離の165倍)のあたりにいるそうです。
その後も現在にいたるまで各惑星の探査は続けられていますが、やはり相対的には、アルテミス有人計画が示すように「火星」への無人探査が多いです。
実はソ連(当時)も1960年代からマルス計画など火星へのチャレンジは行ってましたが失敗続きで、無人探査に関しては圧倒的にNASAが業績を残しています。
近年のNASAによる火星探査については、過去投稿もしているのでここでは割愛します。
ただし、21世紀になると中国やサウジアラビアなども火星探査機の打ち上げに成功しており、もはやNASAの独占状態ではなくなっています。
次回は、これらNASAのライバルにあたる新興国、そして新たな新興企業との関係について触れてみたいと思います。