匂いはどのように感じる?嗅覚を巡る科学と謎の最前線
前回の流れで、ヒトの嗅覚でいまだ解けぬ謎について紹介します。
まずは、Wikiから基本的な仕組みを。
ざっくり言えば、匂いを持つ物質を、下図6の「嗅覚受容細胞」がキャッチするのがスタートです。
その「匂い物質」を受けとめると、あるタンパク質が活発になり、その刺激が脳に伝達されるという流れです。
その重要な役割を担う嗅覚受容細胞ですが、「嗅覚受容体」という名称で分類され、約400種類が発見されています。(機能不全タイプも800超あるそうですが今回は割愛)
人間以外の哺乳類ではこの数が倍以上もあるため(ゾウさんは2000種類)、我々より嗅覚が鋭いと考えられているようです。
その「匂いを持つ物質」ですが、その根っこは低分子量の有機化合物で構成されています。下記サイトとこちらで分かりやすく説明しています。
匂いは数十万の種類が存在し、そのうち人間は1万種類を嗅ぎ分けることが出来ると考えられています。
となると、たった400種類しかない嗅覚受容体と数が釣り合いません。
この謎は、受容体を持つ嗅覚神経細胞が複数の匂い分子の組み合わせによって活性化されることで解かれました。生命の基礎であるアミノ酸が、たった4種類の塩基を3つの組み合わせて豊かに形成されるイメージと似ていますね。
で、今回深堀したいのが、この匂い分子を嗅覚神経細胞が「捕捉」してたんぱく質を活性化する経路です。
つまり、組み合わせはよいとして、
「そもそもどうやって膨大な匂い分子を「識別」するのか?」
ということです。
これについては、鍵(匂い分子)と鍵穴(受容体)がユニークなペアとなるという「形状説」が有名です。
ただ、これにも課題があり、同じ形状の匂い分子でも違う匂い(またはその逆も)があることが説明つきません。
もう1つの説が、「分子振動説」と呼ばれるものです。
例えば、目は光の振動(周波数)パターンの違いを認識することで「見分ける」ことが出来ます。耳も空気の振動で聞き分けるので同じ構造ですね。
同じように、嗅覚受容体も、匂い分子独自の振動パターン(細かく言えば部化合物内の結合による振動)を感知しているのではないか?という説です。
まだマイノリティですが、この説を推し進めているなかでよく話題になるのは、ルカ・トゥリンという生物学者です。
彼は、鍵の形状が違っても同じ振動で同じ匂いを持つパターンを見つけることに成功しました。(あくまで1つのケースですが)
これだけ聞くと、視聴覚も振動の検知だしありえるかも・・・、とうなずきそうです。
しかし、この分子振動エネルギーを理論的に計算すると、あまりにも微弱すぎて、次の「たんぱく質を刺激」するにはエネルギーが全く足りないことも分かってきました。
そこでトゥリンが導入したのが、半導体にも応用されている「量子トンネル効果」です。
古典理論であれば絶対に到達しないエネルギーでも、超ミクロなスケール(原子サイズ)の距離であれば確率的に存在する、という実験で検証された現象です。
そもそも嗅覚受容体が発見されたのも21世紀に入ってからです。
繰り返しですが、いまだ形状説が有力ですが、まだ未解決の謎をこの振動説が補完できる可能性は秘めています。
ということで、嗅覚もいまだに謎があり、それがなんと量子力学も絡んでいる可能性があるかも?というやや刺激的な香りを盛り込んだお話でした☺
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