ミクロの幽霊が量子コンピュータの未来を照らす
「幽霊」という非科学的な用語は、ちょくちょく科学の世界で使われます。
宇宙の世界だと、幽霊(ゴースト)のような銀河団について過去にも触れました。
逆に、ミクロの世界でも、噂される(理論的に予言)もなかなか正体が見えない(検証不可な)幽霊が存在します。そんなミクロ幽霊にまつわる話が最近投稿されました。こちらで閲覧できます。
登場人物は「エットレー・マヨラナ(1906-?)」という科学者です。
Wikiに載ってるので有名な科学者なのですが、死亡年が推測になっています。実は、歴史的にも認められた偉大な業績を残した直後に行方不明になってしまったのです。。。
その動機も遺体もまだ明らかになっていません。科学ミステリーの1つで、陰謀説もまことしやかにささやかれています。(割愛☺)
マヨラナ氏の貢献は、その名前が付けられた「マヨラナ方程式」とそこから導かれる「マヨラナ粒子」です。
基本的な背景から補足しておきます。
物質を構成する陽子や電子はフェルミ粒子と呼ばれ、通常反粒子が別の粒子として存在します。例えば、電子の反粒子は陽電子であり、異なる符号の電荷を持つためこれらは別の粒子と見なせます。
過去の反粒子に関する投稿を添えておきます。
一方で、粒子と反粒子が同一という特異な性質をもつ中性のフェルミ粒子が、素粒子の一つとして1937年に予言されました。
これこそがマヨラナの功績で、名誉として同氏の粒子名が名付けられた次第です。
日本人にはなんとも可愛い語感ですね。(どうしてもマヨネーズを思い出す)
100年近く前に理論的に予言された粒子は、本人だけでなくなかなか見つかりませんでした。
ニュートリノもマヨラナ粒子の候補として挙がっており、研究が進められています。
この粒子ですが、実はコンピュータの世界では重要な意味を持ちます。
次世代コンピュータとして期待されている「量子コンピュータ」の素子としての期待が以前からあります。
この幻の粒子を組み合わせると、ノイズに強いコンピュータが理論上はできます。
冒頭記事では、その夢にまつわるストーリーが展開されています。
ある科学者がマヨラナ粒子を発見し、それを推し進めるためにMicrosoftに買収(要は研究投資)してもらったあとに、論文不正が見つかって企業文化を変えた、という流れです。(ぜひ興味ある方はこちらの記事を)
そのあとに、Googleも量子コンピュータの開発に参戦し、マヨラナ粒子によるエラー低減方法を編み出しつつあります。
ちなみに、日本の研究グループも参戦しています。
マヨラナ氏が行方不明になった謎は依然残りますが、彼が産んだ粒子は、もはや幽霊でなく科学のライトによってその存在が明らかになりました。
そして次世代コンピュータの伝動子として、新しい時代の灯台になっていくわけです。