いんよう!第20回「哲学との距離の取り方」
2019年1月1日公開 29分19秒
これはポッドキャスト番組「いんよう!」を、個人が勝手にまとめているものです。非公式です。
★「いんよう!」とは
★出演 いん(いっちー)→市原真(病理医ヤンデル)
よう(先輩)→牧野曜
★当該回を聴くにはこちらから
★第20回の概要欄
ここからは地引網の収穫です。
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「中にいるのに入り口を求める。それが哲学」
1. インプットは新しいものより好きなものから
最初~4分27秒
● 先週、どうインプットするか、どう世界を広げるかって話になったけど、アウトプットはインプットの先にあるっていうのがいっちーの思想。そのインプットをアウトプットに変換するところに個性が表れて、それはインプットする中で鍛えられるって話だった。
先日noteにも書いたが、新しい世界を知るのはめんどくせえなあ、と思うことがある。(よう)
(これ↓かな)
● もういいよ手持ちのもので、と思うが、反面置いていかれそうな不安感もある。だから新しいことに触れるときは消極的なことが多い。前回はそういう気持ちを込めて、「いっちーって元気だよね」って言った。
新しいものに触れるのがしんどい瞬間もある。おれは今「三ツ星カラーズ」っていう作品に出てくる「琴葉」っていうキャラクターがすごい好きで、ずっと琴葉のことだけ考えていたいと思う。(よう)
● ぼくのやってることが元気かどうか。たとえば琴葉のことだけを考えていたい、というのを突き詰めていくと、たとえば琴葉が行った場所、読んだ本など、世界は広がっていく。ぼくも同じで完全に新しい世界を広げているわけではない。それほど新しもの好きではない。(いん)
2. 哲学の中で歩きながらも距離を取る
4分28秒~8分44秒
● 情報を増やすことのしんどさについては言われつくしているけれど、距離を取ってしまうことがある。自分にとっては哲学やSFがそれ。自分に親和性があるとは思うけど、ちゃんと勉強しようとか知ろうとするにはハードルがある。
「飲茶」さんの「史上最強の哲学入門」という本では、いろいろな哲学者を紹介している。(よう)
● プロレス的なキャッチコピーがあって。あの感じで登場シーンが書いてある。哲学者の大会がある、みたいな設定で。(よう)
● 刃牙好きなんだろうなあ。わかる。(いん)
● この番組のタイトルの「いんよう」は、「じぶんの喋っていることはしょせんオリジナルじゃない」っていう思いがある。全部どこからかの「いんよう」という。
この本を読んでいると、自分が思いついた切り口のようなものが全部、洗いざらい書いてある。自分がここ20年くらいで考えたことなんて、とうに誰かが考えていると思っていたが、こんなにきれいさっぱり書かれているんだな、と。爽快なくらいに。(よう)
● それはあるでしょうね。わかります。(いん)
● 自分が考えてたことは「相対主義」っていうんだ、とかね。一つ一つ言葉を与えられていく。それを掘っていったら自分の考えが深まっていいんだろうとは思う。(よう)
3. 哲学、なぜこんなにめんどくさい?
8分45秒~15分7秒
● この本を読んで、深めていけばいいんだろうとは思うけど、依然としてめんどくせえっていう気持ちがある。(よう)
● オタクの方々が「楽しいよ!おいで!」って言ってるときに「めんどくさそうだなあ」と思って見てるのとおそらく同じことでは。そういう世界の入り口は軸が二つあって、一つは最初に提示される標本みたいなもの、もう一つはさらにそれを解釈とか解析とかで流れを説明する人。哲学もその両方にうまく出会わないと入れないオタクの世界だと思う。だけど、博物の段階しか用意されてないことが多すぎる。あれもあれも知ってるからこれが面白いのに。(いん)
● たとえば哲学書を読むってしんどい。かなり真剣に読まないとわからないし教えてもらわないとわからない。そこを乗り越える、情熱や楽しさ、環境なんかが必要。エンターテイメント作品はサービスされているから入っていきやすい。音楽だってアカデミアに振ると現代音楽になる。(よう)
● 現代音楽って何言ってるか全然わかんないけどおもしろい(いん)
● いっちーから日本のロックの話を聞くけど、だからおれが日本のロックシーンにはまるかっていうとそうではない(よう)
● それはぼくが提示をできてないからだと思う。必要を感じてないのかもしれない(いん)
● 最終的な結論は肌が合う、合わないとか好みになる。哲学は嫌いじゃないけど、遠目に眺めてる。ハードルが高いというのもあるけど、なんなんだろう(よう)
4. 人文科学であり自然科学であり現実であり普遍である哲学黙ってろ
15分8秒~22分25秒
● 医学書院という出版社が國分功一郎さんという哲学者に書かせた「中動態の世界」という本がある。賞は受賞するし売れるし、ものすごくいい本。内容は医学っぽくはないが、編集者は医学書として作っている。医学書院は一般向けの本は出さないという内規がある。一般の人が読める医学書なら構わない。そういう出版社からこの本が出たことがすごい。(いん)
● 医学書院の編集者はものすごく優秀な人間の集まり。彼らが自然科学の本を出す出版社で、医者に本を書かせている。でも僕らが書いている科学の話を見ながら、背景に膨大な哲学の知識とかがある。呆然とする。(いん)
● 素養があるとそういう切り口で読んでおもしろい感想を返せるし、科学をやっててもそういう視線が入ってくる。でも入ってることにぼくは気づかないし、ぼくが長年考えてきたことはどこかの哲学者がもう全部言ってる。(いん)
● もともと哲学と自然科学は同じだったし両方やってた人も多かったんだけど。(よう)
● (病気の)告知の問題とかを考えると哲学、というのはわかるし、疾病の分類とはなにか、とかも自然哲学(いん)
● 存在する、現象を記述するっていうのも哲学の中で考えられている。ニュートンだってそう(よう)
● ニュートンの「プリンキピア」は日本語だと「自然哲学の数学的原理」という名前になっている。「万有引力は哲学やんけ」みたいな。哲学からは離れていられない。(いん)
5. 先輩何回「ゆるキャン△」言うねん
24分05秒~最後
● アマゾンのおすすめで「ゆるキャン△」の作者の新刊が出てきた。(いん)
● ついでに「三ツ星カラーズ」も読んでよ。「うちのメイドがうざすぎる」は読めとは言わないけど。(よう)
●漫画をDLしまくってたら容量いっぱいになってスマホの調子も悪くなってきた。25ギガとかだと思うけど。はい、「三ツ星カラーズ」買いました。(いん)
おまけ いっちーによる「医学書院のメガネのイケメン編集者」紹介
22分27秒~24分00秒
❤ メガネのイケメンでムカつく
❤ スーツのジャケットを脱いだ状態、つまりワイシャツの上にロングコートをピタッと着て、小さめのカバンとともにさっそうと歩いてくる
❤ ヨンデル選書の時に、「この本は手に入らないしフェア向けではないけれど、どうですか」とある本を提案してきたときの、バックにある豊富な人文の知識。そこからひねり出された医学書のおすすめは、何十回殴られてるか、という気にさせられる。
❤ イケメンっぷりが腹立つ
********* 感想 *********
● 前回から一年経ってしまいました。絶対生きてる間にまとめ終わらないけど、生きてる間ずーっと「いんよう!」を聴いてずるずる地引網を引き続けたいです。最高か。
● よう先輩を語る上ではずせないワードの一つ「哲学」。理屈っぽさが魅力の先輩の、その理屈っぽさの源泉だけに、とても興味のあるところです。個人的にも哲学は好きですが、哲学史と日常を哲学として考えることの両輪がないと、ただ退屈なものになってしまうなあと思います
● オタク的な入り口は点と線であり、どちらも示してくれる何かを見つけることがうまく入れるかどうかを左右する、というのはすごく説得力がありました。片方だけでもいいけれど、両方あった方が段違いに楽しい。
● そしてこの話は第17回に出てきた「分類学と系統樹」(ブロッコリーの縦切りと輪切り)にもあてはまるなあ、と。
● よう先輩はめんどくさいめんどくさいとおっしゃいますが、自分がここ何年かで考えてきたことが、哲学ですでに敷かれてきた道だった、ということが実はすごいことで、遠巻きどころか生活の中で哲学を実践してるじゃん、と思ったのは、わたしだけではないはず。
● 次はまた来年になるかもな…。でもやっぱり「いんよう!」は面白いです。ありがとうございました。