《第6話》田島享央己のお彫刻コレクション ―メディアとしてのカプセルトイの役割―
ソータにはクラブ活動のようないくつかの「部」があります。
カプセルトイ化したい商品をジャンル分けしたようなサークルです。
ふわっとしているのですが、フィギュア部、動物部、アート部など各々で名前を付けて、それぞれのジャンルの好きな人が集まってこれやりたい、あれやりたいと話しています。
2020年秋、ソータ経理・人事担当のKATOMIさん(ソータ)から「どうしても田島享央己さんの彫刻をカプセルトイ化したい!」と提案がありました。昔からファンだったそうで、田島享央己さんの彫刻が欲しいけど買えない…。「どうしよう?うちの会社ガチャガチャ屋さんだし、カプセルトイにすれば買える!」
一人のファンが田島享央己さんの作品をなんとか手元に飾りたい気持ちからこの企画がスタートしました。
2020年10月7日、馬喰町にある「gallery UG」(ギャラリーユージー)にKATOMIさん(ソータ)と僕とで伺いました。
1Fにある贅沢なスペースに飾られた何点かの彫刻を見ながら、「うちのカプセルトイはいつも所狭しと飾られているなあ」と思いながら、ギャラリーの地下へ続く螺旋階段を降りていきました。
僕は元々アートが好きで大学も芸術系に進学したので、アート界の最前線で活躍されている憧れのギャラリーの地下室で打ち合わせをする事に、とてもワクワクしていました。
「ギャラリー」とは作家さんとプロデュース契約をして展示会をしたり販売会をしたり、簡単に言うと作家さんが所属する芸能事務所みたいなものです。
そしてgallery UG代表の佐々木さん、ディレクターの関口さんと名刺交換。
お二人にアート作品をカプセル化するお考えについて色々と意見交換させて頂きました。
日本国内においてアート作品は展示会などで見て楽しむ人が多い。所有となると一部のアートが好きなお金持ちが購入したり、投資の為に購入することが多く見受けられます。
一点物なので高価なのは当然ですが、そのためにギャラリー側も購入するコア層にターゲットを絞りがちです。結果、世間一般に認知してもらうのが難しい側面があります。
また一点物の付加価値が下がったり、ブランディングへ悪影響からアートの量産化に否定的な意見もあります。量産によって模倣品や転売品が出回るなどの懸念があるからです。
gallery UGさんは色んなアプローチの方法でまずは間口を広げて、認知して貰うことからスタートすることを重要と考えておられます。
カプセルトイ化することでお客様がミニチュア作品を手にとって直接触ってもらうことが出来ます。
カプセルトイを買った人が画像をSNSにアップして貰うことで、田島さんのミニチュア作品が拡散されます。そこから興味を持ってもらった人の何人かが展示会や個展に足を運んでもらう。
アートに普段触れることない人達に、興味を持ってもらうメディアとしてカプセルトイを効果的に活用しようとして頂いています。
活字や映像の情報媒体と違って、カプセルトイは実際にお客様が手に取って触ってもらうことが出来ます。カプセルトイは全国一斉に情報を発信できる最も効果的な「アナログメディア」に成りつつあると思います。
田島さんに初めてお会いしたのは個展でした。
どんな人なのか会う前に想像を巡らせていました。
作風や書かれる文章を読んで、「破天荒」で「風来坊」なイメージ。
実際はとても気さくで物腰柔らかく大人で紳士な方でした。
そして作品やご自身のプロデュースに明確なヴィジョンを持っておられる方でした。
ただ、「8時だよ!全員集合」でドリフターズの合唱隊が着ているような白の美術服を着てご挨拶して頂いた際は、作風同様、やっぱり笑わせに来ているなと思ってしまいました。(田島さんゴメンナサイ)
何度かカプセルトイ化のお話しはあったとの事。
ソータでご快諾頂いてほんとに嬉しかったです。
2度目にお会いしたのが3Dスキャンの時。
実際に田島さんが製作した木彫作品をソータに持ってきて頂いて、スキャンすることからはじめました。
作家さんの彫り味を生かして、できるだけディティールを損なわない為にスキャン。
何百万円もする作品を僕らは触る勇気が無く、向きを変えて貰ったりするのは全て関口さん(gallery UG)にお願いしました。
昨今NFTアート(ブロックチェーン技術を活用した知的財産権が守られたデジタルアート)がクローズアップされており、造型作品のデジタル保存はアート業界やソータにとっても未来を感じさせるものです。
3Dスキャンデータを使ってミニチュア化するにあたって大きな問題にぶつかりました。
作品の大きさが約30cm、それに対してデータ化してサイズダウンしたミニチュアが約6cm、田島さんが彫った跡が縮小されて消えてしまいました。
また彩色も思うようにいきませんでした。
田島さんの作品は色を何層にも塗り重ねて色彩が作られています。
見る角度や光の当たり方によって色が様々に変化するのです。
カプセルトイは色数を制限しないとコストが跳ね上がるので彩色を近づけることが困難でした。また筆で工員が何万個も塗ることが難しく、試作を何度も重ねましたが納得いくものが出来ません。
いつも量産品をいかに作家さんの作ったものに近づけるかを主眼にしていたので、正解へ近づけず担当のとobayashiさん(ソータ)とカタギリさん(ソータ)はかなり悩みました。
田島さんとソータが出した答えは完全にカプセルトイに振り切る事でした。
木彫造形とは異なる新しい田島作品として世に出す。
デザインはそのままにカプセルトイとして彩色をどうすれば映えるかを田島さんに考えて頂きました。
色の選定にはかなりの拘りを持って何度も話し合いを持ちました。
そして完成したのが
「田島享央己 お彫刻コレクション」(2022年3月発売予定)です。
初めての木彫作家さんとのコラボレーションだったので、ソータも手探りで田島さんと関口さん(gallery UG)には大変ご苦労をお掛け致しました。ここまでお付き合い頂いて本当に感謝しています。
今後、第2弾、第3弾と出せればと思っています。
今後は3Dプリンターを活用して、もう少し大きな形状の複製を作れないか模索しています。
フィギュアの価格帯で買えるアート作品が増えれば、アートに興味を持つ人の裾野が広がり、アート業界の活性化にも一役買えるのではと思っています。
12月28日
SO-TA/ソータ 安藤 こうじ(@kojiando01)