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《第10話》音モノガチャに宿る追体験

カプセルトイにもその年の流行りがあります。

キャラクターのカプセルトイで売れたなあと思い浮かぶのは「キン肉マン消しゴム」「仮面ライダー変身アイテム」「妖怪ウォッチ」「コップのフチ子」「鬼滅の刃」etc…

「ノンキャラ」と言われるキャラクター以外のカプセルトイにも流行りがあって、僕が子供の頃は「モーラー」や「ドラキュラの歯」、最近では「ハンドスピナー」「スクイーズ」「マスコットぬいぐるみ」など、毎年各メーカーが我先にと作っています。
ノンキャラはどのメーカーでも版権許諾無く作る事ができるので、すぐに市場に商品が飽和してしまいブームが終わってしまいます。

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モーラー®(増田屋コーポレーション)


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ドラキュラの歯(こんな感じですが昭和のものはチープだったような… )

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ハンドスピナー(パテントが切れてこぞって各メーカーが出しました)


その中でもここ2年くらい【音モノ】と呼ばれるカプセルトイがブームです。音声ICチップを搭載して、スイッチを押すと音が流れる玩具です。昔からある玩具で音声ギミック付きのティアドロップ型ボールチェーンにアニメキャラクターや芸人さんの声が入っているカプセルトイがよく作られていました。
最近ではトイズキャビンさんが「バスボタン」を出して大ヒットとなり、一気に「音モノ」ブームに火がつきました。

ソータでもこの音声ギミックを使って「学校のチャイム」「夕暮れのチャイム」「セミの鳴き声」「運動会の音楽」「卒業式の音楽」「カエルの鳴き声」「上方落語の出囃子」多くの【音モノ】のカプセルトイを出しています。

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思わず耳に入ってくる音や音楽を聴いた時って、ふっと過去の記憶が呼び戻されますよね。
懐かしかったり、嬉しかったり、悲しかったり、映像と一緒に瞬時に当時の感情が頭の中に溢れます。

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ソータがこのシリーズで大切にしているコンセプトは追体験です。

この間も「セミの鳴き声」のボタンを押してクマゼミのジージー鳴く音を聞いた瞬間、夏の暑い日に田舎のおばあちゃんと一緒に川沿いまでセミ取りに行ったことを思い出しました。

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「卒業式の音楽」では斉藤由貴さんの「卒業」をアソートのひとつに入れました。
ソータスタッフは20、30代が多く、「卒業」に思い入れのある人が僕とツイッター中の人の2人でしたが40、50代が喜ぶ曲も必要との理由で採用されました。

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商品開発の話し合いの時はいつもジェネレーションギャップを感じます。

20、30代のスタッフが話しているアニメの話しについていけなかったり、逆に僕の世代の思い出話を誰も知らなかったり(笑)
ブレストの時、40代は僕1人の時がほとんどです。
当たり前ですが影響を受けているモノやコトが違うんだなと実感します。
その中でそれぞれの年齢層に刺さる商品を開発するのってとても難しいです。

僕の高校時代はBOØWYブルーハーツなどが人気のバンドブームで、みんなバンドを組んで文化祭で演奏したりしていました。僕はビートルズドアーズスミスピンクフロイドなど洋楽をよく聞いていました。

そんな中、日本のバンド【はっぴいえんど】(細野晴臣・松本隆・大瀧詠一・鈴木茂の4人組)が好きでした。洋楽ばかり聞いていましたが、初めて友達にこのバントを教えてもらった時、日本人が日本語で歌っているのにこんなにカッコイイバンドがあるの!!と衝撃でした。

特に影響を受けたのが【はっぴいえんど】のドラマーで作詞家の松本隆さん
「風をあつめて」が大好きでカセットテープに録音してウォークマンで何度も何度も聞きました。独特の言い回しの歌詞で、昔使われていた綺麗な日本語を意識的に選択して歌詞を書かれており、都会の情景を歌った曲なのに、田舎のノスタルジーを感じました。

この曲を聞くと、須磨の海岸沿いを神戸電鉄の車両が走る姿をいつも思い浮かべます。

小学生の時に松田聖子さんの「赤いスイトピー」や「青い珊瑚礁」をよく耳にしていました。モノゴトの外観しか捉えられていなかった当時高校生の僕は、それらの作詞が松本隆さんと知って【はっぴいえんど】と対極とも言えるジャンル【歌謡曲】の歌詞を書く松本隆さんに裏切られたようなショックを感じました。

今、カプセルトイを作る側を経験して思うことは、実際にモノづくりとしては格段に【歌謡曲】の方がハードワークです。

歌謡曲は音楽に造詣が深い人だけをターゲットにしているわけではないので、マニアに向けてだけ作ればいいのではなく、より分かりやすく作りあげないと多くの人の心に刺さらない。
目指す販売数の分母が違います。多くの制約や規格があるプロダクトデザインと同じで大量生産の為のフォーマットに当てはめないといけません。

【作家の作品】と【作家のカプセルトイ】の関係と少し似ているような気がします。

カプセルトイは作品内容を分かりやすくデフォルメして、いかに多くの人に手に取ってもらえるか。

カプセル筐体の前にお客様が立った時、刹那に100円玉を入れてもらえるか。各メーカーさんが意識しているポイントです。


カプセルトイって玩具では少し特殊で見た瞬間笑えるような出オチ感が強い商品がよくうけます。
瞬発力が大切で、バズらせて共感してもらうことが重要なキーワードです。
なのでとてもSNSと相性がよい!

逆にカプセルトイでじわりと感動させることはなかなか難しい。
お客様にこの商品を買いたいと思って頂き、100円玉5枚以内の商品原価で実際に手に取って「これはいいものだ」と満足してもらうのは本当に難しいです。

ソータはカプセルトイの中に【はっぴいえんど】の歌詞のようなマニアックな拘り要素を詰め込んで、唯一無二のカプセルトイ作りを目指しては挫折しています。
でも目指すところは、一度遊んだらお終いではなく、少しでも長く愛ででもらえるモノを作りたい。

ソータのカプセルトイも松本隆さんの歌詞のように、年月が経っても誰かの心に残るモノがひとつでも作れればいいなと思います。



もう半年程経ちましたが、日本武道館まで「風街オデッセイ2021」に行ってきました。
初めて生で【はっぴいえんど】が演奏する「風をあつめて」を聞いて、
リアルタイムで【はっぴいえんど】を体感していない僕は、
やっとファンを公言していいような気がしました。

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2022年 4月 12日
SO-TA/ソータ   安藤 こうじ(@kojiando01

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