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【夢に見たアニメの世界へ!】VR酔い防止の独自技術『Astra Engine』が生まれるまで

こんちには!株式会社UNIVRS COOの小路(こうじ)と申します。
UNIVRSは日本発のIP(アニメ・漫画・ゲーム版権)とVR技術を掛け合わせたVRコンテンツ開発を行うスタートアップです。

「あのアニメやゲームの世界に入ってみたい」と思ったことありませんか?VR(バーチャルリアリティ)の技術によって、そんな誰もが子供の頃に夢に見た体験が実現しつつあります。

「Meta Quest 2」のCMが日本でも流れるようになってしばらく経ち、「VR」や「メタバース」といった言葉もだいぶ浸透してきたかと思います。何かしらのVRデバイスを被ったことがある人も最近では珍しくなくなってきた印象です。

なので、「VR酔い」について聞いたことがあったり、実際に体験されたことがある方も増えてきているのではないでしょうか。

「VR酔い」はVR空間内で移動する際に起こる乗り物酔いと同じような症状で、世界中のVR開発者が抱える最大の課題でもあります。

実はUNIVRSはそんなVR酔いを解決する技術の開発から始まった会社です。

この記事では、UNIVRSの独自のVR酔いを防止する移動技術「Astra Engine」がどのようにして生まれたかをお話しします。

noteを始めたきっかけ

(※本記事の主旨とは外れた前置きなのでご興味なければこのパートは飛ばして読んでいただいて大丈夫です!)

実はこの記事がUNIVRS初のnoteになります。今までUNIVRSでは、ゲームのプロモーション以外の情報発信をあまり積極的には行ってきませんでした。

ところが今月(2023年4月)、資金調達の一環として「イークラウド」で株式投資型クラウドファンディングに挑戦することになり、その紹介ページを作る過程で大きな学びがありました。それは「UNIVRSの強みや魅力を可視化しておくことの重要性」でした。

改めて第三者視点で創業の経緯からまとめていただいた紹介ページは非常にわかりやすく、「これは資金調達だけでなく、採用活動や今後の会社の成長に向けて自社でもっと継続的に蓄積していくべきものだな」と感じました。

そんな訳で遅ればせながら少しずつでもUNIVRSについて形にしていこうと思い立ち、noteを始めてみることにしました。

株式投資型クラウドファンディング「イークラウド」UNIVRS紹介ページより

Astra Engineが生まれるまで

この記事では「なぜUNIVRSがVR酔いを解決する技術を生み出すことができたのか」についてをお話ししたいと思います。

VR酔いやAstra Engineの基本的な情報については、イークラウドさんによるUNIVRS紹介ページにて非常にわかりやすくご説明いただいたので、ぜひこちらをご覧ください。



鍵は『ジェスチャー認識』

「Astra Engine」はUNIVRSの創業者である藤川啓吾と藤川駿の兄弟が作り出したVR酔いを防止する移動技術です。

そのコアとなる「ジェスチャー認識」を車酔いを例にご説明します。
私自身もそうなのですが、普段車酔いしやすいタイプでも、自分で運転する時は酔わないですよね。運転手が酔わないのは、自身の身体を使って視界の動きをコントロールできているからです。自動車におけるハンドルやアクセル/ブレーキペダルは、「腕や足の動き」を検知して「車体の動き」=「移動」に変換する「ジェスチャー認識装置」とも言えます。
「Astra Engine」は言わばVR内の体験者自身のアバターを運転するためのシステムのようなもので、操作に「身体の動き」=「ジェスチャー」を取り入れることにより、直感的で酔わない移動を実現しています。

このジェスチャー認識こそが、VR酔いを防ぐ鍵になるのですが、VRゲーム開発おけるジェスチャー認識の知見は世界的にまだまだ不足しています。
家庭用ゲームにおいて、コントローラのボタン入力は「一次元入力」、スマホゲームのタッチパネルは面で入力する「二次元入力」であるのに対し、ジェスチャー認識を使った入力は体験者の頭部と両手の動きを使った「三次元入力」となり、従来のゲーム開発とは全く異なる知見が必要になります。

ではなぜ、UNIVRSが高いジェスチャー認識技術を持つことができたのか。その理由を、藤川兄弟それぞれの経歴からお話しします。



兄 / 藤川啓吾

兄の藤川啓吾はUNIVRS創業以前、Logbarというスタートアップに創業4人目のメンバーとしてジョインし、指輪型ウェアラブルデバイス「Ring」の開発に携わっていました。

当時、藤川啓吾の主な仕事は「Ringのユースケースをひたすらに考え出すこと」でした。指を使ったジェスチャーを人々の生活に役立てるにはどうしたら良いのか、様々な可能性を模索していく過程で出会ったのがVRでした。体験者がバーチャル空間に完全に没入しる体験の中で、ジェスチャー認識が体験のコアになることを確信し、そこからVRの開発にのめり込んでいきました。

2015年当時、世界中の開発者がVR開発に乗り出す中、ジェスチャー認識は関連技術の一つではあったものの、それを開発の主軸にする開発者(特にコンテンツ開発)は多くありませんでした。今から思えば、その珍しいアプローチこそがVR酔いの解決に辿り着く道だったんだと思います。

ただ、ジェスチャー認識という糸口に辿り着いたとしてもそれを技術として完成させられるかどうかは別の問題です。今までユースケースがなく、世界的に知見が足りていない技術を、「Astra Engine」として完成させられたのは弟・藤川駿の存在があってこそでした。


弟 / 藤川駿

弟の藤川駿はUNIVRS創業前、大手自動車メーカーのSUBARUでエンジン開発の最終工程にあたる動作テストに関わる仕事をしていました。
VRの魅力に取り憑かれた兄に引きづり込まれる形でUNIVRSを創業するのですが、その経緯もイークラウドさんがわかりやすく(漫画で)まとめてくださったので全編はぜひそちらをご覧ください。

株式投資型クラウドファンディング「イークラウド」UNIVRS紹介ページより

藤川駿が携わっていたエンジンの動作テストでは、様々なセンサーが用いられ、「センサー値」をソフトウェア側で処理し、エンジンの状態を細かく分析します。

一方、VRデバイスも頭部のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)と両手のコントローラに内蔵されているセンサーで周囲の状況と体験者の身体の動きをリアルタイムで検知してVR体験を生み出します。

どちらも同じ「ハードウェアのセンサー値を扱う技術」が求められ、藤川駿のその技術によってUNIVRSのジェスチャー認識開発が大きく発展しました。

ジェスチャー認識自体の技術として特異で難易度が高い理由のひとつとして、扱わなければならない”変数"の多さがあります。
「一次元入力」(ボタン操作)や「二次元入力」(タッチパネルのスワイプなど)と違い、VRの「三次元入力」は頭部と両手が空間内のどの座標にあり、どこへ動くのか、その「相対位置」や「加速度」が全て変数となるため、扱わなければならない情報が今までと比べ物にならないほど複雑になります。

「ジェスチャー認識の0→1を考え続けた人間」「ハードとセンサーの扱いに長けた人間」が偶然にも兄弟だったこと。それがこの複雑な技術を使いこなし、「Astra Engine」として完成させることに繋がっていきます。



常識を打ち破れ

ふたりが適切な技術を持っていたとはいえ、「Astra Engine」の開発は容易なものではありませんでした。

そもそも、なぜVR酔いの問題が長きにわたって世界的に解決できていなかったのか。技術的なハードルの高さはもちろんですが、その他に大きな理由のひとつとして、プラットフォーマー側からのガイドラインでVR酔いを引き起こすものとしてVR内での移動が非推奨とされていたことが挙げられると思います。

その結果、VRゲームは「ワープ移動」を使うか、移動を伴わないゲームデザインにするものが多くなり、ゲームジャンルに偏りが目立つようになりました。

開発当初、前職の経験からVR酔いの知見があった藤川啓吾は、ガイドラインに沿った上での体験設計を模索していました。しかし良い意味でVR開発に先入観が無かった藤川駿が「本当にダメか、一度自分たちでやってみよう。自分たちで見たものだけ信じよう。」と兄を説得し、ガイドラインと完全に逆行する体験の開発に取り組み始めました。(その辺りの経緯もイークラウドで漫画化していただいています)

株式投資型クラウドファンディング「イークラウド」UNIVRS紹介ページより

数多の失敗作を生み出しVR酔いを繰り返しながらも、だんだん前述のふたりのスキルが噛み合い始め、「Astra Engine」の基礎が完成しました。



はじまりはシンプルな理由

振り返ると様々な偶然が重なって生まれた「Astra Engine」ですが、はじまりは藤川兄弟の「あのアニメやマンガのような体験を生み出したい」というシンプルな理由からでした。

「VRなら夢に見たアニメの世界に行けるぞ!」→「VR酔いのせいで理想の体験ができない!」→「酔いを解決するぞ!」→「Astra Engine爆誕!」→イマココ

シンプルにするとこれぐらい真っ直ぐに自分たちがやりたいと思ったことに向かって突き進んだ結果、いくつもの偶然が噛み合い、それがある種の必然となって生まれたのが「Astra Engine」だったのではないかと思います。



あとがき

「Astra Engine」の開発は、XR特化のインキュベーションプログラム「Tokyo XR Startups」参加中に行われ、筆者はそのプログラムでUNIVRSの担当として支援する立場にいました。

当時からVRデバイスメーカーの方々や海外のVRスタートアップの方々と交流する機会が多く、当然私もVR酔いは「"防ぐもの"ではなく"避けるもの"」というのが常識だと思っていました。

そんな中で藤川兄弟がその課題に真っ向から挑戦し、「Astra Engine」が作られていく過程を目の当たりにして「これはとんでもない技術が生まれたのではないか」とワクワクしたことを覚えています。(そのワクワクに抗うことはもちろんできず、UNIVRSがプログラムを卒業する際、私も前職を卒業してUNIVRSにジョインしました。)

この記事で書いたことは当時本人たちに自覚があったわけでもなく、ジェスチャー認識がVR酔い突破の鍵になることも最初から確証があったわけではありませんでした。

それでも、「あのアニメやマンガのような体験を生み出したい」という強い意志が引き寄せた"偶然"の数々は"必然"だったとしか思えないほど綺麗に繋がっていったので、意志の力は不思議なものだなと感じています。

「Astra Engine」誕生後もそんな不思議な偶然の連鎖はたびたび起こっていて、そのあたりもまた別のnoteで書いていきたいと思っています。

(ここまで読んでいただいた方へ)慣れないnoteで長文になってしまいましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました!


※追記 4月8日(木)に無事イークラウドのプロジェクトが目標金額に到達いたしました!応援いただいた皆様には感謝しかありません・・・!4月16日(日)まで実施しているので、ご興味あればぜひ紹介ページを覗いてみていただけると嬉しいです!


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