取材される「ネタ」の必要条件
マンションメーカー広報担当15年、PR会社経営15年のPRプランナーが、地方の中小企業に特化した広報PRのヒントを発信しています。
1.残念なプレスリリース
地方の小さな会社が「新商品を開発したので売り出したい」、「自社のサービスを広く知ってほしい」、そんな思いで、頑張ってプレスリリースを書いてメディア向けに配った。でもその後、メディアからの取材申し込みや問い合わせはひとつも来なかった・・・。
これは普通に、よくあるケースなんですよね。でも、こういうことが二、三度続くと「うちのような小さな会社には広報ＰＲは無理だ」とあきらめてしまう方が多いようです。
それはあまりにもったいない。原因を究明して対策を施せば、取材に結び付く可能性が飛躍的に高まります。
2.ネタになるニュース性とは？
先ほどのプレスリリースで取材が獲得できなかった原因は何か。ひとつには、そのプレスリリースに書いてある内容が、メディアが求める「ネタ」とマッチしていなかった、つまり「ネタになるニュース性が備わっていなかった」、ということがあります。
企業としては「新しい商品やサービスについて多くの人に知ってもらい、買ってもらいたい」と思ってプレスリリースを出します。一方、メディア側は「社会に今、知ってもらうことで、世の中を良い方向に変えていきたい」と思って、ニュースのネタを探しています。
プレスリリースを送る側と受け取る側の「意識の差」があるんですね。
記者たちは、自社のメディアで伝えるべきニュース価値のない情報をネタとは呼びません。いくら企業側が取材されたいと思っても、ネタとしての価値を感じられないプレスリリースは、右から左、すぐにゴミ箱に直行です。
メディアに取材してもらうためには、最低限、次の4つを備えた情報を発信しなくてはいけません。
① 新規性・・・まだ世の中に広く知られていない新しい情報であること
② 社会性・・・報じることで社会にプラスの影響を与える情報であること
③ 普遍性・・・読者・視聴者の多くに無理なく伝わる情報であること
④ 適時性・・・今、報じるべき「旬」・「タイムリー」な情報であること
一般的に、これらのどれかが欠けていたら、取材すべき「ネタ」としての価値が低いといえるんです。
3.ゴミ箱直行のプレスリリース例
たとえば、あるメーカーの経営者からこんな内容のプレスリリースが届いたとします。「○○月○○日、最新型金型成型機『ＢＴ ＭＬ12』を販売開始します。○○機能を取り入れ、○○㎡／分の加工が可能です。・・・・・・」
このリリースを全国紙・地方紙やテレビの記者が受け取ったら、即刻ゴミ箱に直行でしょう。
確かに「最新型」は新しい情報ですが、読者や視聴者でこの機械に関心を持つ人はごく一部しかいない（普遍性の欠如）。新しい機能や生産能力のようなスペックが並んでいても、社会に与えるプラスの影響が読み取れない（社会性の欠如）。今の世の中の動きと最新の金型成型機開発の関連性がわからない（適時性の欠如）。
工業系の業界紙やものづくりの専門誌の記者なら、別な切り口でネタとしての価値を感じてくれるかも知れません。こうした情報はメディアの選定を考えるべきですね。
あるいは、飲食店の店主から「新店情報！日本一おいしいアフリカ料理の店「○○○○」がオープン！シェフが腕によりをかけて、地域の皆さんを笑顔にします」というプレスリリースが届いたとします。このリリースにも、先ほど述べた社会性、普遍性、適時性のいずれもが足りませんので、残念ながらゴミ箱直行です。
「アフリカ料理」のイメージが大多数の人にはわかない。今アフリカ料理を紹介する必然性がない。「日本一おいしい」「腕によりをかけて」など抽象的な表現ばかりで社会に役立つ要素が読み取れない。
このリリースではネタにはなりません。
4.ネタとしての条件が揃えば取材確率が向上
でも、実際に新聞社やテレビ局に送られてくるリリースには、この程度のレベルの案件が多いんですね。
逆に「新規性」「社会性」「普遍性」「適時性」をきちんと押さえたリリースが書けたら、記者の目に止まり、取材される「ネタ」と認めてもらえ、掲載・放送される確率が格段に向上すると言えるんです。
ぜひこれを踏まえて、プレスリリースづくりに取り組んでください。
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