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台湾で、統一地方選の結果を受けて、与党民進党主席を辞任した蔡英文総統(総統職は継続)に代わり、頼清徳副総統が同党主席に選出されました。


台湾では、2024年1月に、蔡英文総統の任期満了に伴い総統選が行われますので、頼清徳氏が、蔡英文氏の後継候補として踏み出したことになります。頼清徳氏は、台湾大学医学部出身の内科医で、長らく民進党のホープとされてきた方です。米ハーバード大では公衆衛生の修士もとられており、そういう意味では、本来は厚生がご専門の超エリートといえますが、台南市長、行政院長(首相)を経験されており、内政面での実績は申し分ありませんし、知名度は非常に高いです。

親日的な発言が多く、安倍元総理の弔問に私的に来日されたことでも知られていますが、一貫して台湾は独立しているという旨の言動を繰り返されており、それに対しては中国政府が相当に警戒している人物と言えます。

元々、民主党は、国民党に比べるとそのような土壌があるとはいえ、蔡英文総統は、一線を踏み越えた発言を寸止めで絶妙に避けてきた巧さがある感がありますが、頼清徳氏は、ストレートな発言が多く、両岸関係は、少なくとも1年後の総統選まで、波高し・・・となる可能性が高まりました。

個人的には、両岸危機は、あくまで経済合理性の観点からは起こす意義は皆無と考えています。はっきり言って、誰にもメリットはありません。

それでも軍事専門家は、まことしやかにシナリオを策定するようになっており、どんなシナリオだろうと、ロシアのウクライナ侵攻に比肩、さらにそれ以上のネガティブインパクトになることは間違いなのではないのでしょう。

背景には、ロシアウクライナ侵攻は、経済合理性を超越したものにも見受けられ、経済合理性を超えた判断が万が一下されると両岸危機の可能性では0とは言い切れない事があるのでしょう。

その可能性と、例えば日本の都市型地震の可能性とどっちが高いのか?誰もが、明確には答えらないようにも思えます。

ただし、2023年に気を付けなければならないのは、G7議長国という立場もあって内実とは別に表面的には若干勇み足モードになると見込まれる日本、半導体など機微分野で対中強硬姿勢が続く米国、2024年初に行われる台湾総統選、これに中国がどのように対応するか、そのことが、少なくともアジアにおいては、リスクに機敏なマーケットに相当な重石となって影響を与えることになりそうです。

また、日本では、そこに関連して防衛費の増強、半導体産業への財政支援、同盟国との親密演出の場面の増えそうです。

他方で、次期相当選挙は、台湾の与党民進党には、外部環境としてはアゲインストである事には留意が必要です。

台湾では、民進党はコロナ後の景気浮揚がうまくいかず支持率では劣勢です。2023年はインフレがもたらす高金利で世界経済が減速すると見込まれるなか、半導体という秘密武器を持つ台湾と言えども、その影響は回避できず、その点、野党の国民党には若干追い風です。

仮に2024年の総統選挙を国民党が取れば、両岸関係は変わり、緊張感は緩和されると見込まれます。国民党は、朱立倫主席がやや優勢ですが、蒋介石氏のひ孫で台北市長となったばかりなのでまだ時期尚早という声もある蔣万安氏も含め、まだ、誰が、総統候補になるかわかりませんが、一本化されると、民進党の頼清徳氏にとっては、かなり手強い相手になりそうです。

他方で、中国が民進党への圧力を高め過ぎると、それは、選挙の際には民進党への追い風になると見込まれ、総統選の行方は最後まで目が離せません。

この1年、台湾には世界の耳目が集まり、日本もまた事実上その渦中に居る・・・そういう認識を、日本企業も持っておく必要がありそうです。









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